孤立無業者(SNEP)の社会復帰を促す自治体の取り組みとは

2014年06月25日 12:15

 日本では仕事がなくて、友達もいなくて、配偶者もいなくて、寂しく引きこもって孤独な毎日を過ごす人は「ニート」と呼ばれてしまいがちである。「ニート」の定義は「15―34歳の非労働力人口の中から学生と専業主婦を除き、求職活動に至っていない者」であるが、その定義よりも若干広い意味で使われている。他方、仕事なし、友達なし、配偶者なし。寂しく、孤独な毎日を過ごす「SNEP」(Solitary Non-Employed Persons=孤立無業者)と呼ばれる人々が日本社会に出現している。この「ニート」と「SNEP」の違いであるが、前者が貧困の視点から、後者が他者との関係(孤立)の視点からみたという違いがあるが、それほど相違はない。仕事もなく、他者から孤立していて社会と接点を持てていない人がいるという、両者とも現代の深刻な問題だ。

 秋田県の北部白神山地に面する藤里町では、こうした社会問題の解決のために斬新な活動を行っている。社会福祉協議会が実施した調査によって、18歳から55歳までの町民1293人のうち9%弱にあたる113人が仕事もなく、孤立していることが判明した。40歳以上は半数近くであることも明らかになった。この調査はふたつの意味で重要な意義があった。第一に、調査を単なるアンケート調査ではなく、調査員が粘り強く社会復帰するようアプローチしたこと、第二に、その後の活動に道を開いたことである。この調査の後、地域ぐるみで、さまざまな形の働く場を用意する活動を行った。例えば特産品の「白神まいたけキッシュ」などを就労支援施設「こみっと」での販売訓練などだ。この施設では販売訓練、適性に合わせて仕事を斡旋するなどの活動を行った。その結果、前述の113人のうち3割近くが就労したという。全国の他の自治体も勇気をもって実態把握をするときだろう。そして、地域の人々が手を差し伸べられる「こみっと」のような場を作り出すことが必要とされている。(編集担当:久保田雄城)