今後ますます少子高齢化が予想される日本だが、年金制度や経済成長以外に、高齢者のセルフネグレクト対策も新たな課題とされている。
セフルネグレクトとは、自己放任という意味で、虚無感にさいなまれ、食事や身なり、衛生環境等に無頓着になりやすい。本人の意思の場合と認知症などで判断能力が低下する場合の2通りがあるという。テレビでもみかける「ゴミ屋敷」がその一つで、飲食や体調管理、最低限の衛生状態の保持、金銭の管理など通常の生活を維持する為の行為を行なう意欲や能力を喪失し、安全や健康を損なうこと示す。約10年前から医療・福祉の分野で研究とされているテーマだ。
内閣府経済社会総合研究所が、各自治体にある地域包括センターや民生委員に調査したところ(2009年度時点)、セルフネグレクト状態にある高齢者数は全国で1万人前後。陥る原因としては疾病や入院が24%、家族関係のトラブルが11%、身内の死去が11%となっている。一人暮らしでは孤立死等の危険があるため、約9割の自治体が重要な問題として認識しているが、実態を大部分把握しているのは、約1/4にとどまるっているようだ。
同所が実施したセルフネグレクトに属する人へのアンケート調査集計(2012年)によると、セフルネグレクトの人の約8割は一人暮らし。同居家族がいる人は約2割だが、家族や親族との関係の悪化が事態を招ねいているケースも少なくはない。セフルネグレクトとされる家族と同居していても、「その人の身の回りの世話をする41.1%」が「ほとんどしていない58.6%」を下回っているのが現状で、その理由に「家族や親族と関りたがらない」「家族・親族が高齢で世話ができない」「どう世話としたらよいか分からない」などが挙げられた。
このような問題の解決には、本人とその家族以外に中立な立場である行政や医療関係者等が関与し、対処する必要があるだろう。しかしあくまで個人の権利を尊重しなければならないので当事者が訴えない限り、支援の手が介入しにくいのが現状だ。そのバランスを取るのが難しい。
セフルネグレクトを減らす今後の対策としては、「生命に関る事態には緊急に支援できる法律や制度を整える」「民生委員や住民ボランティアなどが地域で孤立している高齢者を発見し、支援する仕組みを作る」ことが必要だと専門家は話す。
人間関係が希薄になっている現代社会だが、まずは身近な人々の声かけや助言が、セフルネグレクトの人の閉ざされた心を徐々に開いていくのではないだろうか。(編集担当:野口奈巳江)