本体価格33万円、125cc三輪バイクの魅力

2014年07月05日 20:14

本体価格33万円、125cc三輪バイクの魅力_2

TRICITYの本体価格は33万円、9月10日に販売。年間7000台(国内)を販売目標に掲げる。

 ヤマハ発動機<7272>からついに発表された、次世代リーニングマルチホイール(LMW)の「TRICITY MW125」。同社、柳社長の40万円を切るとの公言通り、33万円という驚きのプライスタグをつけて9月10日に発売されることとなった。

 このプライスを可能にした理由は、タイで生産されているからだが、そもそもTRICITYは今年の4月から、世界に先駆けタイで販売を開始した、LMW製品の第1弾となる記念すべきモデルでもあるのだ。

 リーニングマルチホイール(LMW)の、リーンとは“傾斜”という意味で、路面状況にあわせて左右のホイールが独立して動くのが特徴。そのため、二輪車同様にスムーズで軽快なハンドリング特性を持ちつつ、石畳や荒れた路面でも安定した乗り心地を実現している。フロント2輪やリア2輪タイプはすでに他社からも出ているが、決定的に違うのは、ヤマハ独自のリーニングマルチホイールを採用したことだ。

 その他にも、MotoGPで培った技術を反映させた50:50という重量配分や、左ブレーキレバーを操作すると、リアブレーキとフロントブレーキにランスよく効力を発生させ、制動時にハンドルのふらつきが少なく、コントロールしやすい、UBS(ユニファイドブレーキシステム)を搭載している。

 発表会当日は、同時に試乗会も行なわれ、気になる乗り心地だが、とにかくハンドリングが2輪同様にニュートラルで、懸念されていたフロント2輪ゆえの抵抗や重さは全く感じない。スラロームやコーナリングでも安心して車体を倒せ、挙動も安定していた。コーナーが苦手だった今までのトライク(3輪車)とは違う乗り物と考えていいだろう。ただ気をつけないといけないのは、3輪とはいえ、左右のサスペンションが独立して動くLMWを採用しているために、停止状態ではスタンド無しにバイクが自立しないということ。とはいえ、停止状態でも抜群の安定性を誇り、立ちゴケしにくいバイクと言える。

 ここで、同社から販売されている同じ排気量である125ccスクーター「シグナスX」と比べてみることにする。ボディサイズは全長で35mm、全幅で50mm、全高で80mm、TRICITYの方が大きく、重量も30kg重い。ただフロントが2輪だということを考えると、驚くほどにコンパクトでスマートなのがわかる。それは燃費にも反映されていて、馬力は同じだが、エンジンがオールアルミ製シリンダーや水冷になったこともあり、WMTCモード値は38.8km/L(1名乗車時)と、なんとシグナスXと同じ燃費数値なのだ。価格は本体価格がTRICITYの方が6万5000円高い33万円となる。

 TRICITYは従来の125ccスクーターと同じ原付第二種(125ccまで)の扱いになり、ヘルメットの着用が義務付けられている。これは左右の車輪の間隔が460mm未満のため二輪車扱いになるからだ。だから普通自動車免許&ノーヘルで運転できる従来のトライクとは扱いも乗り味も違い、より二輪車に近いコミューターという位置づけになる。実際にTRICITYを真上から見ると、フロント2輪はフロントカウルの内側にあるほど、その間隔は近いものになっているのがわかる。

 従来からあるスクーターの概念を打ち破った、オートマチックスーパースポーツ「TMAX」を2000年に登場させ、今度はフロント2輪のリーニングマルチホイール「TRICITY」を市場に投入し、常に新しさを提供し続けてきたヤマハの柳社長は言う。

 『ヤマハ発動機は、モノ作りで輝くために、“らしさ”を極めていきたいと考えています。そのヤマハらしさとは「独創的コンセプトを提案する」「卓越した技術を実現する」「洗練された躍動美をデザインする」+「現地、現場に執着してお客様と絆をつくる」。このTRICITYはそのヤマハらしさにこだわる新しい乗り物の提案です』

 しばらく低迷が続いた二輪市場に、新たなカテゴリーを注入したTRICITYが、さらなるモビリティの可能性を広げてくれることだろう。(編集担当:鈴木博之)