再生エネ買い取り制2年 増える企業・家計の負担

2014年07月15日 12:37

再生エネ買い取り制2年 増える企業・家計の負担

企業や家庭が再生エネで生み出した電気の買い取りを電力会社は義務づけられており、買い取り費用は電気代に上乗せされている。政府から発電の認定を受ければ、買い取り価格は10~20年間固定される。再生エネが普及するほど、企業や家計の負担も膨らむ仕組みだ。

 毎月自宅へ届けられる「電気料金のお知らせ」。そのなかに「再エネ発電賦課金等」という項目があるのをご存じだろうか。そこには「再生可能エネルギー発電促進賦課金」および「太陽光発電促進付加金」を合算した金額が表示されている。政府は太陽光など再生可能エネルギーでつくった電気の買い取りを電力会社に義務づけているが、電力会社は買い取りコストを電気料金に転嫁できる。そのコストが、このような形で電気料金に上乗せされているのだ。

 電気料金への上乗せ額は標準的な世帯で、2012年度の月87円から14年度には225円に上がった。上乗せ額が増える速度は、再生エネが世界で最も普及しているドイツを上回る。国際エネルギー機関(IEA)の予測ペースで再生エネの拡大が進むと、18年には上乗せ額が600円を超える可能性もあるという。

  再生エネの普及を狙い12年7月に始まった固定価格買い取り制度。政府は企業の投資を促すため、割高な買い取り価格を設定してきた。初年度の40円は先行して同様の制度を実施するドイツの倍以上。初年度に申請者が殺到し、その規模は発電能力で1870万キロワットと原発約18基分にのぼった。その結果、再生エネの発電設備の97%が太陽光に偏ってしまい、せっかく導入した制度に誤算が生じている。

 固定価格買い取り制度の認定を受けたものの、実際に設備を整えた業者は全体の約一割にとどまるとする報道もある。材料となる太陽光パネルが値下がりするまで運転の開始を遅らせ、儲けを増やそうとする業者が続出しているためだ。認定後いつ運転を始めてもいいことになっている事業者側としては、設備投資費を抑えるには、パネルの値下がりを待ってから購入するのが得策だ。このため、当面事業を始めるつもりはないが、パネルの値下がりを待ってとりあえず認定を受けたという業者も後を絶たない。再生エネルギー事業者が設備の認定を受けた時点の額が最長20年間にわたって適用される。土地や設備の取得の前に「ひとまず認定」を目指す業者が続出。業界内では「早め認定が必須」とのムードが高まり、さらなる“駆け込み認定”が相次いだ。

 電力会社の買い取り費用は、結局は消費者や企業など利用者が負担する。塩漬けや権利売買が横行し、実態が不透明なままで、負担だけが増加すれば消費者の不信は募る一方だ。再生可能エネルギー普及のためにと甘く設定した制度は、その信用性すら揺るがしかねない問題を顕在化させている。(編集担当:久保田雄城)