ついに「太陽光利権」のバブル退治が始まった。経済産業省は先月17日、再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」の対象となっていた144件の認定を取り消したと発表した。いずれも太陽光発電の業者。国から認定を受けたのに、発電の設備や土地を確保していなかったためだ。
再生エネの普及を狙い2012年7月に始まった固定価格買い取り制度。政府は企業の投資を促すため、割高な買い取り価格を設定してきた。初年度の40円は先行して同様の制度を実施するドイツの倍以上。初年度に申請者が殺到し、その規模は発電能力で1870万キロワットと原発約18基分にのぼった。だが運転を始めたのは2割にすぎず、大半は未開発の塩漬けだ。融資の不調や地権者との調整、事業者不在、資材の値下がり待ちなど理由は様々。これを見て売電権を転売するブローカーまでもが暗躍し始めた。
認定後いつ運転を始めてもいいことになっている事業者側としては、設備投資費を抑えるにはパネルの値下がりを待ってから購入するのが得策だ。このため、当面事業を始めるつもりはないが、パネルの値下がりを待ってとりあえず認定を受けたという業者も後を絶たない。再生エネルギー事業者が設備の認定を受けた時点の額が最長20年間にわたって適用される。このため、1キロワット時当たり40円という「高値」が設定された初年度には、土地や設備の取得の前に「ひとまず認定」を目指す業者が続出。翌13年度に価格が約36円に値下がりすると、業界内では「早め認定が必須」とのムードが高まり、さらなる“駆け込み認定”が相次いだ。そして現在の買い取り価格は32円まで値下がりしている。
権利転売の横行、塩漬け案件の増加。経済産業省は初年度に認定した中大型の計画について調査を実施、認定取消に至った。さらに14年度からは、認定から半年以内に土地の契約書と設備の発注書の提出を義務付けた。だが、政府の規制強化には抜け道があるとの見方もある。「土地と設備の契約書は地主や設備販売会社、ブローカーが結託すれば作成が可能」(太陽光発電関係者)。電力中央研究所の朝野賢司主任研究員は「実効性は不透明」と指摘する。
電力会社の買い取り費用は結局は消費者や企業など利用者が負担する。塩漬けや権利売買が横行し、実態が不透明なままでは消費者の不信が募る一方だ。再生可能エネルギー普及のためにと甘く設定した制度は、その信用性すら揺るがしかねない問題を顕在化させた。(編集担当:久保田雄城)