トラブル続きのNHK 抜本的見直しが必要ではないか

2014年07月26日 08:16

路線価上昇で三重苦 相続税・売却益も増税

放送法第3条は「放送番組は(中略)何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定め、第32条では経営委員の権限について「委員は個別の放送番組の編集について、第3条の規定に抵触する行為をしてはならない」と定めている

 NHK記者やカメラマンが番組づくりに、STAP細胞再現実験に臨んでいる小保方晴子さんを追いかけ、小保方さんがホテルに逃げ込んだ後も執拗に追った結果、小保方さんに頸椎捻挫など約2週間のけがを負わせた。取材する立場にいる者として、お詫びしたい。

 STAP細胞が存在するのかどうか、世界から注目される検証だけに特に取材には一定の配慮が必要だし、渦中の人物を取材する場合に、報道人としての良識は備えていなければならないが、今回の事案は真相を突き止めたいという取材姿勢より、番組作り優先姿勢が引き起こした行き過ぎとしか思えない。

 取材対象者が置かれている状況を判断して対応することは取材陣のモラルの問題で、小保方さん代理人の三木秀夫弁護士が「(小保方さんは)犯罪者扱いだとか、実験をしたいのに右手が痛いのでは支障が出る。非常に悔しいと話している。再発防止を要請する」と抗議文をNHKに送ったとしたのは当然だろう。

 こうした強硬取材が行われたのはなぜか、NHKに社会的常識を逸する取材を行う記者がいるとすれば、今回の事態を引き起こした要因について、NHKとしてその原因を明らかにするとともに、再発防止、今回の記者、カメラマンへの社としての顛末を、HPとニュース番組できちんと番組制作責任者が説明すべきだろう。25日現在、NHKのホームページには載っていないようだ。そしてNHKが小保方さん側に謝ったという報道を目にしたのは民放各社のニュース番組だった。NHKは行ったのだろうか。

 番組の在り方では「えっ」と驚いた出来事がある。最近だ。集団的自衛権の行使容認をめぐる今月の国会中継を車中で聞いていた。

 ところが午後5時に中継が、相撲中継に切り替えられた。憲法にかかる重要案件で、国家の安全保障・外交政策の重要性から閉会中審査をしている国会予算委員会であるにも関わらず、相撲中継を優先する感覚。理解に苦しむ。ニュース価値をどう捉え、報道しているのか。この問題はNHKの番組づくりで検討頂くべき課題だ。

 さらに、散々、国会でも経営委員に相応しい人物なのかと遡上にのぼったNHK経営委員会の百田尚樹経営委員が、またも物議を醸している。

 朝日新聞報道によるとニュース番組「ニュース9」の大越健介キャスターが在日コリアン1世について「韓国併合後に強制的に連れてこられたり、職を求めて移り住んでこられた人たち・・・」と発言したことを百田委員が経営委員会で取り上げ「在日韓国・朝鮮人を強制連行したといっていいのか」などと問題視したとある。

 放送法第3条は「放送番組は(中略)何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定め、第32条では経営委員の権限について「委員は個別の放送番組の編集について、第3条の規定に抵触する行為をしてはならない」と定めている。

 最も、それ以前に、経営委員が個別の番組について関与することはないと総務大臣も国会で答弁していた気がする。さらに、4月に佐賀で行われた視聴者と語る会合で経営委員について、石原進委員は「私ども経営委員会は12名の委員からなっており、皆、良識がある方々でございます」と話していた。

 百田委員は経営委員として良識はあるといえるのだろうか。経営委員会の規定すら読んでいないのではないかと疑いたくなる。

 経営委員会は「経営に関する基本方針、内部統制に関する体制の整備、毎年度の予算・事業計画、番組編集の基本計画などを決定し、役員の職務の執行を監督する機関」で個々の番組に直接干渉できるものではない。

 そして、経営委員会規定には第3条5項で「委員は、放送法または放送法に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない」と明記されているばかりか、第3条6項では「委員は個別の放送番組の編集について放送法第3条の規定に抵触する行為をしてはならない」と個別番組への関与をしてはならない旨が規定されている。

 こうした規定も踏まえていない人物が経営委員として発言する状況はやはり異常だろう。

 堂本光副会長は籾井勝人会長の就任直後の問題発言や理事に辞表を提出させた問題を佐賀での視聴者と語る会で質された際に「籾井会長は自分の考えを放送に反映させることは断じてないとおっしゃっている。公正・公平であるとか不偏不党であるということが放送法をはじめ、番組基準やさらに細かいガイドラインにも明確に記述されています」と番組づくりに影響することはなく、公正・公平、不偏不党の下で、公共放送として自由に取材活動・番組づくりができることを強調した。

 同様に、経営委員が経営委員としての立場をわきまえ、不用意な発言をしないよう、経営委員長は注意をするとともに、その故意・過失を問わず放送法に抵触する行為が重なるようなら、放送法に基づいて、罷免するよう総理大臣に要求すべきではないのか。

 百田委員はさきの都知事選でも自ら応援する候補以外の候補を「人間のクズ」と語るなど、不偏不党、人権尊重の精神から逸脱した発言をしている。今回は経営委員会での発言なので、さらに深刻な問題といえよう。

 NHKの自浄能力はどこまであるのか。これら一連の問題にNHKとして、それぞれの機関がどのような対応し、解決を国民に示すのか、注視していくことが必要だ。(編集担当:森高龍二)