2017年後半にも世界の航空会社に納品される予定の欧州エアバスの次期中型旅客機「A330neo」。この機に搭載するエンジンは、先月15日にイギリスのファンボロー空港に行なわれた「ファンボロー国際航空ショー」で、英ロールス・ロイス社のエンジン「Trent7000」に決定したと発表された。このエンジンの採用で「A330neo」は、燃費を従来比14%アップさせて航続距離を大幅に伸ばすという。
そのエンジン開発に、川崎重工業が参画すると12日、日本経済新聞が一面で伝えた。川崎重工業は英ロールス・ロイス社と共同で取り組むという。川崎重工業が担当するのは、燃費向上の重要なパーツとなるタービン周辺部品などだ。
この6月には、次世代大型旅客機「ボーイング777X」の開発・量産に川崎重工業を含む日本の5社が参画するためにボーイング社と覚え書きに調印したと報告したばかりだが、欧州エアバス社と米ボーイング社が、旅客機開発競争を繰り広げるなか、日本の航空機産業界の存在感がますます高まる。
エアバスの新鋭機「A330neo」に搭載するエンジン開発の取りまとめ役となるロールス・ロイス社から参画を打診された川崎重工業は、エンジンを収めるタービンケースや、推進力を効率的に生み出す基幹部品のタービンディスクの製造を担当。2016年には部品生産・納品をスタートさせる。
同社は2011年に、米P&W社、日本航空機エンジン協会(JAEC)、独MTU社の3社によるエアバス社のA320neo用エンジン「PW1100G-JM」の国際共同事業にJAEC構成メンバーとして参画した。3社はエアバス社A320用エンジンである「V2500」プログラムの共同ビジネスパートナーであり、「PW1100G-JM」についても3社共同ビジネスパートナーによる国際共同事業として立ち上げた経緯を持つ。また、現行のエアバスA330のエンジン開発にもロールス・ロイス社とともに参加した実績があり、現在、西神工場(神戸市)でエアバス社向けのタービン部品を月15基分生産している。その安定した品質管理と納期が評価されたもよう。
2013年、川崎重工業はボーイング社向けも含めてエンジン部品を計1100基分出荷し、2016年には1600基分まで増やす計画だった。そこに今回の新エンジン「Trent7000」搭載分が加わる。
川崎重工業は、中小型民間航空機用エンジンにおいて、JAEC構成メンバーとして航空機開発の国際共同事業への多数の参画実績を持っている。新型エンジンである「Trent7000」においても、エンジン開発技術力の高度化、生産基盤の強化など蓄積してきた経験が、新エンジンの開発・量産に貢献すると思われる。(編集担当:吉田恒)