サントリーHD、国内総合酒類産業で遂にトップに立ったその理由

2014年08月14日 12:12

Suntory_HD

サントリーHDの酒類事業で国内市場重視となるビール事業を牽引する「ザ・プレミアム・モルツ」は、2014年上半期で761万ケース(同期103.2%)を売り上げた。

 国内の総合酒類企業ランキングに変化があらわれた。先ごろ出そろった2014年1月-6月期の国内大手酒類会社の決算をみると、この5月に米ビーム社を買収し連結決算対象に加わったことも手伝って、サントリー・ホールディングス(HD)が、売上高と営業利益でトップに立った。サントリーHDが首位となるのは、2009年にサントリーグループが持株会社制に移行して初めてとなる。

 決算報告書によるとサントリーHDの今期売上高は1兆1089億円(前年比118.0%)、営業利益644億円(同132.0%)で、どちらも過去最高を記録した。

 中核上場企業のサントリー食品インターナショナルが担当する飲料・食品セグメントの売上高は5946億円(同115.5%)と高い伸びを見せた。なかでも、健康志向の高まりを背景に注目を集める特定保健用食品部門で「伊右衛門 特茶」などが好調に推移し、販売数量が前年同期を大幅に上回った。また、「サントリー天然水」は、“清冽でおいしい水&ナチュラル&ヘルシー”をブランドコピーとして訴求し、ブランド全体の販売数量が前年同期を大幅に上回り、4月発売のフレーバーウォーター「サントリー 南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」は、年間販売目標を上方修正した。

 サントリー酒類が中核のビール・スピリッツ部門では、売上高3295億円(同125.9%)で、買収したビーム社の売上高575億円が加算されたことで大きな伸びにつながった。

 酒類のなかでほぼ純粋な国内事業であるビール事業は、国内で3292万ケース(同102.1%)と過去最高の販売数量を達成。また、当社ビール類のシェアも、15.5%(課税数量ベース)で過去最高となった。主力製品の「ザ・プレミアム・モルツ」は、ブランド力の向上やお客様との接点拡大に取り組むなどマーケティング活動を強化し761万ケース(同期103.2%)だった。新ジャンルの売れ筋ブランド「金麦」は、1704万ケース(同109.5%)と好調に推移。ノンアルコールビール「オールフリー」も、312万ケース(同104.9%)と堅調に推移している。ビール事業は、アジア・オセアニアなどで「ザ・プレミアム・モルツ」の販売強化を行なっているという。

 スピリッツ事業は、主要ブランドが好調に推移し、前年比107.0%の売上を記録。主力商品「角瓶」のコミュニケーションを2月に刷新し、食との相性訴求活動を強化した結果、前年比109.0%と大きく伸長した。国産プレミアムウイスキーは、「山崎」「白州」「響」ブランドが好調に推移し、同122.0%と大幅に売上を伸ばし、本格的なウイスキー復活に繋がることが期待されている。4月には世界的な酒類コンペティションで「響12年」がカテゴリー最優秀金賞を受賞するなど、輸入ウイスキーの「ジムビーム」「メーカーズマーク」などのバーボンウイスキーを中心に積極的なマーケティング活動を展開し、堅調な伸びを示している。

 国内総合酒類メーカーのなかでアサヒグループ・ホールディングス(HD)も好調だ。同グループの2014年上半期連結営業利益は目標の370億円に対して400億円超になり、上半期営業利益として過去最高となった。アサヒグループHDの2014年上半期の売上は、前年比4%増の8100億円超。

 昨年、ギフト限定商品の「スーパードライ・プレミアム」を本年2月から通常販売商品とし、ユーザーの高級ビール志向に応えた結果、消費増税による買い控えなどを克服し、堅調に売上を伸ばした。スーパードライ・プレミアムは販売計画の1.5倍に達するという。プレミアムビール市場はサッポロの「エビスビール」、サントリーの「プレミアムモルツ」が席捲してきた。そこにビール最量販企業のアサヒが新たなブランド投入に成功したということ。

 アサヒビールの主力商品である「スーパードライ」の販売も堅調で、上半期で2%増。同社は新ジャンル・発泡酒などを含めたビール類全体の70%以上が税率の高いホンモノのビールが占めるメーカー。顧客の支持は高く、自信を深めている。同社では2014年度の営業利益を前年比5%増の1230億円と見込んでいたが、上半期の好調を受けて上方修正する可能性も出てきた。

 一方、キリン・ホールディングスの売上高は1兆562億円(同96.0%)で、営業利益は502億円(同83.0%)と落ち込んだ。国内営業利益が18%減となる139億円となったことが影響した。キリンはワールドカップ・サッカー日本代表の公式スポンサーで、その開幕に合わせて販促・宣伝を行なった。これが結果的にマーケティング失策につながったようだ。

 これら3強と比べて影が薄いサッポロ・ホールディングスだが、売上高2398億円(同104.0%)、営業利益10億円(同210.0%)と底堅い経営を行なっている。

 サントリーHDは、2014年度通期においてもキリンなど他3社を抑えてトップに立つもようだ。(編集担当:吉田恒)