サントリー酒類のビール事業が独立すると報道。サントリーHDは真っ向否定

2014年07月07日 08:18

Premium_Malt

サントリービールの赤字脱却に貢献した「プレミアムモルツ」。その販売躍進にも陰りが出てきた現状で分社化は“吉となるか凶となる”か? そもそも分社化報道が霧のなか?

 サントリー・ホールディングス(HD)の社長に、ローソン会長・新浪剛史氏(55歳)が今秋に就任するニュースを伝えたばかりだが、新浪剛史氏の社長就任を前にサントリーHD周辺が騒がしい。

 7月4日に日本経済新聞などが伝えた情報は以下のとおりだ。

 先般、サントリーHDによる米ビーム社買収の際に、少しだけ記したサントリー酒類事業が大きく変わるようだ。日本国内のサントリー酒類株式会社には、酒類でもワイン(果実酒)を除くスピリッツ類事業とビール事業のふたつの大きな柱がある。が、日経などのレポートでは、新浪剛史氏の社長就任後すぐに、ビール事業を分離・分社化し、スピリッツ類事業はビーム社買収で出来た、米ビームサントリー(米・イリノイ州)傘下に置くこととなるという。

 報道によれば、「新浪剛史社長を迎えるにあたり、グローバル化への準備・体制を整える」ためと言うことだ。が、サントリーHDは、「本日(7月4日)、一部報道機関において、当社ビール事業会社および人事に関する報道がありましたが、当社が発表したものではありません。
また報道された内容について、具体的に決定した事実はありません」と、サントリーHDは同社のホームペ時で真っ向から否定している。

 サントリー酒類の売上実績は、2013年12月期で約5700億円と言われる。そのうち、2011年に初めて「プレミアムモルツ」効果で単年黒字化したと言われるビール事業は約2900億円だ。サントリーのかつての収益源だったウイスキーをメインとするスピリッツ(蒸留酒)事業は、近年のハイボールブームで復活しつつあるとは言え、20年以上の長いウイスキー需要の低迷もあり2800億円に止まる。米ビームサントリー傘下に国内のスピリッツ(蒸留酒)事業を置くことで、ビームサントリーは世界スピリッツ企業第3位となる。

 報道によると、新設となるサントリービール株式会社(仮称)の社長には、現サントリー酒類の常務でビール事業部長の水谷徹氏(53歳)が就く模様だ。分割後のサントリー酒類社長には小泉敦スピリッツ事業部長(53歳)が昇格就任、現社長の相場康則氏(65歳)はサントリーHD副社長とビームサントリー役員を兼務すると、極めて具体的だ。

 サントリービール独立の背景には、48年間続いた萬年赤字体制から「プレモル効果」で脱却したことが大きな要因だろう。が、国内市場をメインにするビール会社としては、「アサヒ」と「キリン」の2強と比較すると脆弱と言わざるを得ない。東京オリンピックの年に生まれた東京府中の武蔵野工場ブルワリーも、やや旧態化しており、全面的な改修に時期に近づいていると思われる。今後の先行きは如何となろうか。(編集担当:吉田恒)