本当にお買い得な住宅とは。住宅業界駆け込み反動減の次の一手。

2014年08月30日 19:58

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積水ハウスは、在来工法の4倍となる業界最高強度の新構法「ハイブリッドS-MJ」を開発し、大開口や大空間の快適な住まいを実現。同構法を導入した新商品「モデラーレ」の販売を開始した。

 住宅業界は今、大きな転換期を迎えている。消費税の二段階引き上げと、来年1月に控えた相続税と贈与税の税制改正、さらには建設現場での人手不足や資材の高騰など、住宅業界を取り巻く環境の変化とこの先の動向に注目が集まる。一方で消費者の関心事は、住宅金利の動向だ。消費税負担や目先のキャンペーンなどが気になるのは人情だが、30年や35年のローンの場合1%上がると、条件にもよるがトータル返済額は400万円も変動することもある。三菱東京UFJ銀行は27日に10年固定型の最優遇金利を年1.20%と過去最低金利を更新する引き下げを発表し、みずほ銀行、三井住友銀行なども続いた。中長期的には史上最低金利がいつまでも続くはずはなく、どこかで必ず上がってくる。住宅受注は業界全体では落ち込んでいるというものの、まさに今がお買い得の時期ともいえる。

 住宅業界の今後の販売戦略のテーマとしては大きく分けると「お値打ち価格」と「高付加価値」の2つが挙げられる。他業界でもそうだが、戦略の2極化が進む。

 住宅業界においても、過去に「価格」勝負でジリ貧に陥ったり、安売りでブランドを棄損したメーカーもあった。景気が少し上向き始めた今、消費者の購買意欲自体は高まっており、リーズナブルなものよりも、付加価値・資産価値の高い「商品」への関心が高まっている。易きに流れず、ここは踏ん張り、価格勝負ではなく、住空間の快適さや環境配慮型の設備といった付加価値の高い「商品」に注力する会社もメーカーもある。特に資本力、開発力に勝る大手メーカーは、他社との差別化を図り、ブランド力を押し上げるにはもってこいの状況というわけだ。

 例えば、パナホーム<1924>はパナソニックグループの技術力で「スマート&エナジー戦略」を展開している。同戦略の具体的な内容としては、2018年には同社の戸建全商品のネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)化と、大規模な災害時でも系統電力に頼らずに生活が維持できる「エネルギー自立」の実現を目指すという。

 業界最大手の積水ハウス<1928>も、ネット・ゼロ・エネルギーハウスの取り組みでは一歩業界に先んじている。太陽光発電や燃料電池などを搭載したZEH仕様の戸建て住宅の普及を推進し、実に6割を占めるに至っている。さらに、住まい心地を追求した住宅提案や設計自由度を高める構造の強化に力を入れている。同社では8月25日より、木造住宅「シャーウッド」において耐震性能は高いままで大開口や設計自由度を確保した新構法「ハイブリッドS―MJ」を開発し、全商品に展開を始めた。「ハイブリッドS―MJ」は、在来工法の4倍となる業界最高強度の耐力壁のほか、モノコック構造の堅さとラーメン構造の高い自由度を併せ持つ構造、集成材と鋼材を一体化した構造材等、木造住宅初の技術を多数導入している。これらの建築技術がもたらす最大のメリットは、高い耐震性能を維持しながら、設計自由度を飛躍的に高めることに成功した点だ。従来の住宅に比べて感動的なまでに壁面が少ない大開口や、最大6メートルスパンの大空間が特長で、同社が提案する明るく開放的な室内と現代風にアレンジされた軒下空間を設けることで、自然と心地良くつながる暮らし「スローリビング」がより実現しやすくなった。さらに同社では、「ハイブリッドS-MJ」の全商品導入に合わせて、新商品となる「モデラーレ(modellare)」の販売も開始している。

 ライフスタイルは昔と大きく変っても、住宅が一生に一度の大きな買い物であることに変わりはない。同じ商品なら一円でも安い方がいいのは当たり前だが、スーパーやドラッグストアに並んでいる消耗品とは根本的に違う。「住宅のコストは、取得時の『イニシャルコスト』、生活時の『ランニングコスト』、そして維持補修の『メンテナンスコスト』の3つがある。取得時は目先の価格だけに目が奪われがち。3つのコストトータルで検討しなければ、結局高いものにつくこともある」(積水ハウス・広報部)。住宅は長く付き合う「商品」だけに、イニシャルコストだけでは、その価値は計れない。イニシャルコストが安いだけの住宅が本当にお得かどうかはわからない。太陽光発電やメンテナンス性の良い設備は、ランニングコストを削減できる。何よりも快適に、生涯満足して暮せるということは何にも代えがたい。住宅はライフサイクルコストで比較することが賢明といえよう。

 それでも、低価格で勝負しようとする業者も多い。高付加価値商品戦略を重視するメーカーが今後の変化をチャンスと考える理由の一つは、そんなところにもあるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)