パイオニアは、パソコンやiPhone、iPadなどと接続可能なDJコントローラーの最新モデル、「DDJ-WeGO3」を発表したばかり。世界中のDJから愛されるブランドだけに、こうした新商品などの技術や特性も引き継がれていってほしい。
9月3日、国内大手電機メーカー・パイオニア<6773>が、レコードプレイヤーを始めとしたDJ機器部門の売却を発表した。同社は今年5月には主力の1つであったAV機器部門の売却を発表していたが、それに続く伝統主力部門の売却となるのか。
オーディオマニアやクラブDJ、コンサート音響事業者には衝撃の発表だ。パイオニアと言えば日本屈指の音響機器会社、それも世界に認められる品質を持つ超優良メーカーである。特にクラブミュージックシーンでは、レコードプレイヤー・ミキサー・ターンテーブルなどで世界トップシェアを誇っている。パイオニアは今回の売却については「コメントできることはない」としているが、売却となれば苦渋の決断になることは想像に難くない。
パイオニアが苦境に立たされている状況は、この数か月で一気に表面化している。5月にはAV機器部門の売却、8月末にはシャープ<6753>との資本提携解消。企業再編に向けた大幅な解体が進んでいる。
順番に見ていこう。まず、AV機器については関連子会社の株式をオンキヨー<6628>と香港の投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアに売却することで基本合意している。しかし、これはまだ最終合意には至っていない。原則としてはオンキヨーとの業務提携という形でパイオニアブランドは維持される予定だが、主導権はオンキヨー側にあるのは間違いない。
続いて、シャープとの資本提携解消だ。この提携は元々、薄型テレビ・ブルーレイドライブ・カーナビなどの共同開発と、低迷するパイオニアへの救済措置という意味合いがあった。しかしパイオニアが09年にテレビ事業から撤退、そして今回AV機器部門からも撤退したことで、資本提携は解消されてしまった。なお、合弁会社によるブルーレイドライブ開発などの業務提携は続けられる見通しだ。
今回のDJ機器部門も、売却先を探している状況だと思うが、それが国内外のどこの企業になるかはまだ発表されていない。パイオニアは、これからカーナビなどを中心とした自動車機器事業を中心に経営方針を組み直していく予定だとしている。
音楽を聴く環境がレコードやCDデッキからパソコンやiPodなどに移り、音響機器業界全体がどんどん苦境に立たされている。「いつかはあのメーカーのスピーカーやプレイヤーで愛聴盤を聴ききたい!」という感覚は、だんだん古いものになっていくのだろうか。ブランド力や品質の高さを考えると、『パイオニア』というブランドの維持や、商品開発の技術は継承されていってほしいと願うばかりだ。(編集担当:久保田雄城)