自動車業界とその周辺を巡る急速な動き。ビッグデータとIoTが業界で交差する日は近い?

2014年06月28日 12:37

taxi_Toyota

タクシー業界や物流を担う運送業界ではビッグデータを活用した車両の稼働時間と修理コスト低減などに期待が高まっている。写真は昨年のモーターショーで発表されたトヨタの次世代タクシー車両。ハイブリッド車でビッグデータを活用するIoT搭載は必然か?

 ここ数年、IT関連のキーワードとして最も注目されてきたのは「クラウド」だ。しかし、「ビッグデータ」が新たなキーワードとして注目されている。自動車関連業界でもビッグデータの利用を模索している。

 このビッグデータを巡って自動車業界と周辺の動きは急だ。自動車に関わるビッグデータは大きく2つに分けられる。「交通系」と「それ以外」だ。交通系ではメーカー各社が、カーナビ向け情報サービスのテレマティクスでユーザーの走行ルートを収集分析して、ナビゲーションで渋滞のない経路を案内するなどに活用している。日本では乗用車系として先日発表となったトヨタのG-Bookに換わる「T-Connect」やホンダの「InterNavi プレミアクラブ」など挙げられる。一般消費者には馴染みが薄いが、業務用車両の「みまもりくん(いすゞ)」や日立が提供する「タクシープローブ」などもある。対応するクルマは全国で300万台以上とされ、東日本大震災や昨冬の大雪災害などで通行可能な道路を即座に割り出して話題となった。

 政府も自動運転やITS(高度道路交通システム)の運用を活性化させる視点から交通系ビッグデータ基盤の整備に乗り出す構えで、公的サービスの充実、新しいビジネスの創出に向けた検討会をスタートさせた。テレマティクスで世界の先端を行く日本が、交通系自動車ビッグデータを活用すれば雇用や産業に活性化だけでなく、世界に向けた自動車周辺産業において付加価値戦略でも世界をリード出来ると踏んでいる。

 しかし、各社のテレマティクスには課題もある。テレマティクスで収集したデータは各メーカーが所有しており、サービスに互換性がない。

 しかし、自動運転の技術がクルマ単体で完結しないことが明確になった昨年あたりから様子が変わり始めた。つまり外部の情報を受けながら他車とも相互に通信する自動運転技術の開発競争が国際的に激しくなるなかで、政府はITS計画を練り直し始めたのだ。「自動運転と交通系データの利活用で相乗的な発展が期待できる」として、交通系ビッグデータインフラの整備に乗り出す。

 検討するテーマは渋滞解消や災害時の避難誘導、事故多発地帯での未然注意と防止、自動運転のサポートなどに向けて各種システムを構築する。2017年から24時間運用となる準天頂衛星システムを組み合わせれば1cm単位の一即位がGPSで可能になりサービスの精度が格段に上がるというわけだ。

 一方、交通系以外のビッグデータについても動きがある。国交省が「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン検討会」を立ち上げ、自動車の登録・車検情報を管理する「MOTAS(自動車登録検査情報処理システム)」で、クルマの生産情報、走行履歴、修理整備情報、事故履歴などを加えて運行特性を見極める。その特性に応じた新しい自動車損害保険の開発やリコールに繋がりそうな故障の早期発見、盗難車の早期割り出しにも利用できる。「単純な経年変化」だけではなく、使用走行状況に応じた新たな車検制度も考えられるというのだ。

 自動車ビッグデータの活用はメーカー自身も模索している。そのなかで有力なのは、やはり故障の予知だ。車両データを集めて解析するために使うのが、スマートメーターなどで昨今話題のIoT(Internet of Things/モノのインターネット)で、車両の稼働時間と修理コストに対して要求が厳しい物流運送業車やタクシーなどの商用車での期待が高まっている。(編集担当:吉田恒)