近年、デジタル技術の進化とともに音楽の楽しみ方が昔とはずいぶん変わってきた。最近ではCD規格を超えるハイレゾ音源が登場し、音楽とともにあるライフスタイルも多様化している。かつてオーディオといえば、大きな部屋の中で、レコードプレーヤ、アンプ、カセットデッキ、そしてスピーカーというシステムで聴いたものだった。そして、いわゆるアナログ時代には幾度かのオーディオブームがあり、各大手家電メーカーもそれぞれのオーディオ専用分ブランドでオーディオ機器を扱っていた。
中でも、パナソニック(当時は松下電器産業)<6752>の「Technics」は、国内外で評価の高かったレコードプレーヤを中心に展開しており、オーディオファンの憧れの的だった。しかし、時代の流れとともにアナログオーディオは衰退し、「Technics」ブランドも2010年に終止符を打った。ところが、今回、パナソニックが、オーディオ専用ブランドとして「Technics」を復活、2014年12月の欧州市場へのハイファイオーディオシステム新製品導入を皮切りに、順次、グローバルに展開していくと発表した。
この新製品とは、ハイレゾ音源対応のステレオシステムを中心としたものになる。同社が長年培ってきた音響技術と最先端のデジタル信号処理技術を応用した新たな、そして本格的なデジタルオーディオブランドとして復活する。
「Technics」ブランドは、1965年に密閉型2ウェイ2ユニットスピーカーシステム「Technics 1」をブランドの第一号機として発売した。1970年には、世界初のダイレクト・ドライブ式(D. D. )ターンテーブル「SP-10」を発売。その後、コントロールアンプ、パワーアンプやCDプレーヤなど多彩な高級音響製品を市場投入してきた。しかし、2008年のパナソニックへの社名変更・ブランド統一により、オーディオ製品についても「Panasonic」ブランドに統一し、「Technics」は、同年に発売したクォーツシンセサイザーD. D. プレーヤ「SL-1200MK6」の生産終了(2010年)をもって終止符を打った。
TechnicsのD. D. ターンテーブルシリーズは現在でも、世界中のアナログファンの間で愛されている名機である。かつては、アナログで名をはせたブランドがデジタルの最新技術で復活するとは、少し皮肉っぽいが、素晴らしい音楽を届けてくれることに期待したい。(編集担当:慶尾六郎)