「味の素」、北米・冷凍食品事業で年商1000億円を目論んで、米ウィンザー社を840億円で買収

2014年09月20日 19:35

Ajinomoto

味の素の冷凍食品事業の2013年度売上高は1201億円、今回買収する米ウィンザー社の売上高は日本円で840億円(2013年度)ほど。アジア料理やメキシコ料理、イタリア料理系などの冷凍食品に強い

 味の素の連結子会社である味の素ノースアメリカ社(米国・味の素/米国ニュージャージー州)が、米食品メーカーのウィンザー・クオリティ・ホールディングス(テキサス州ヒューストン市)を買収することについて合意に達し、持分売買契約を締結したと、味の素社が公式にリリースした。

 米国・味の素によるウィンザー社の買収額は800万ドル(約840億円)で完全子会社化する。味の素の企業買収では過去最大となる。ウィンザー社は非上場で主に冷凍食品を手掛ける。味の素は海外で事業拡大を進めており、ウィンザー社の商材や販路を活用して北米販売に弾みをつけたい考えだ。

 過去、味の素の企業買収では、2006年に傘下に収めた中国食品メーカー、アモイ・フード・グループがある。が、今回は、その時の買収額273億円を上回り過去最大のM&Aとなる。このところ、味の素は海外で積極的に合併・買収を行なっている。

 ところで、米ウィンザー社の売上高は日本円で840億円(2013年度)ほど。アジア料理やメキシコ料理、イタリア料理系などの冷凍食品に強い企業だ。一方、味の素の冷凍食品事業の2013年度売上高は1201億円で、企業全体の12%を占める。米国・味の素の冷凍食品事業は麺類や米飯類が中心で、2013年度売上高は135億円。現在はおもに大手GMSと取引しており、ウィンザーの販路を活用して小規模の小売店とも取引関係を深める模様だ。

 つまり、買収発表に際して味の素が発した「当社の北米冷凍食品事業における強みである、高い技術に裏打ちされた日本発の製品群に加え、ウィンザー社の米国消費者に精通したマーケティング力、全米に広がる流通ネットワークと営業力、全米をカバーする生産拠点を獲得することで、2020年度までに北米における冷凍食品事業規模1000億円を実現。北米の日本食/アジア食の冷凍食品市場で圧倒的シェアNo.1を目指す」こととなるわけだ。

 味の素は、グローバル・スペシャリティ・カンパニーを目指しており、海外コンシューマー・フーズ事業においても、独自の先端技術を活かし顧客や展開国への適合を徹底させてきた。そこにグローバルに成長してきた実績を持つ味の素ならではの自信があらわれている。中国などの新興国では、同社の基本旨味調味料「味の素」をはじめ、風味調味料などの地域味覚に合わせた調味料の事業化を推進してきた。一方、欧米先進国では、加工度が高く日本発のユニークな価値を持つ製品群である冷凍食品・加工食品を主軸として現地に適合した日本食・アジア食を展開してきた。

 味の素によると、北米の冷凍食品市場は約400億ドル(日本円で約4兆円)の巨大なマーケットだ。なかでも日本食をはじめとしたアジアの食品はやヘルシー・高品質といった差別化されたカテゴリーに位置づけられていて、成長著しい分野だという。

 ウィンザー社は北米マーケットで冷凍食品事業に精通し、米国冷凍食品市場において大手流通系以下に取扱店舗数約8万店と幅広い流通ネットワークを持つ。また、外食系レストランなど約12万店とも強固な取引がある。

 今回の買収により、北米冷凍食品市場の中でも成長分野である日本&アジア食市場において、同社得意のギョーザ・麺・米飯を中心に、ウィンザー社の販売網を利用して、全米の小売チャネルへの販売を加速し、併せて外食チャネルでの販売基盤強化を目指す。2016年度には味の素グローバル販売で、冷凍食品事業全体の売上高1900億円を見込んでいる。

 本年11月上旬には、味の素ノースアメリカ社がウィンザー社の全持分を取得する予定。(編集担当:吉田恒)