クラブ内ではレーザー光線とミラーボールの光以外、フロアではほとんど照明を付けていない場合も多い。イベントによっても照度は異なるため、「照度」が1つの基準となった場合、店舗側やイベンターは根本的な演出から見直さなくてはならなくなる可能性もある。
秋の臨時国会に向け、風俗営業法(風営法)改正の動きが加速している。焦点となっているのは現代のクラブカルチャーに適合した改正だ。
ここ数年、若者のカルチャーの1つであるダンスクラブに対する摘発などが続いていた。しかしそれは、施行後60年間改正されていなかった風営法を基準とした摘発であり、クラブ経営者や利用者からは、「時代と合っていない」、「規制される『ダンスの定義』が曖昧すぎる」と批判の声も多く上がっていた。これを受け、秋の臨時国会での改正案提出に向けて、警察庁は見直し案の検討を続けている。
検討されている改正案の内容は、条文から定義の曖昧なダンスの文言を削除すること、そして店舗の営業時間・照明の明るさによって、以下のように分類する方向で進んでいる。午前0時までの営業かつ照明が10ルクス(休憩中の映画館程度)以上の場合は一般飲食店に分類。風営法の適用外となるが、ただし午後22時以降の未成年者の入店を禁止する。午前0時以降も営業かつ照明が10ルクス以上の場合も、風営法適用外となるが「深夜雄興飲食店」として新しい規制の対象とする。午前0時以降も営業かつ照明が10ルクス以下の場合は、風営法適用内。ただし、都道府県ごとの条例により柔軟に営業時間の延長を可能とする。
こうした改正案に対し、クラブ経営者・利用者からは「曖昧だったダンスの定義が文言から外されたのは進歩」としながらも、明るさによる基準に疑問を持つ声もあるようだ。クラブカルチャーには音楽をかけるDJの他、映像を流し雰囲気を盛り上げるVJ(ビジュアルジョッキー)も存在する。視覚的な演出上、暗さにも意味があり、また演出時間帯によって照度にも違いがあるため、暗い時間を狙っての照度計測などが恣意的に行われないかを懸念する声もある。
警察側としては、計測可能な明確な基準ができる分、取締りがしやすくなるとしている。一部のクラブで薬物乱用や暴力事件などがあることは否めないため、取締りは必要だが、文化の表現の幅を狭めるようなことにはならないよう、最後まで調整は行われるべきだろう。(編集担当:久保田雄城)