6月13日、古谷国家公安委員長は閣議後会見を行い、クラブ営業への規制を緩和し、秋の臨時国会にて風俗営業法(風営法)の改正案を提出する方針を明らかにした。ここ数年ダンスクラブの摘発が強化されていたが、「規制自体が時代に合わない」と経営者や利用者を中心に反発が起こっていた。改正に向かったきっかけは、4月25日に、摘発にあった元クラブ経営者に対し「規制の対象ではない」と無罪判決が出たことが大きい。これでようやく一歩前進と言えるだろう。
クラブ営業は飲酒や享楽的な雰囲気から、性風俗の乱れにつながる恐れもあるとして風営法に基づいた摘発が10年頃から強化されていた。背景には近隣の騒音被害や、ドラッグなどの拡散を防ぐ目的もあったが、問題となったのは法律と時代のズレだ。現在の風営法は1948年に制定されたものだ。当時はダンスクラブと言えば女性ダンサーに接客をさせ、売春を助長する営業が流行していたため、男女がダンスを行う店は風営法の規制対象に当たるとされていた。しかし、現在のクラブやライブハウスというのはそういった性風俗を乱す場所には当たらないだろう。にもかかわらず、「音楽を流し、男女の客を踊らせた」ことが風営法の規制対象になるとして、クラブ経営者などが風営法違反の罪に問われるという事件が起こっていた。
これに対し、経営者や利用者、ミュージシャンなどが法改正を求め署名活動などを行っていた。事実、現行の風営法では、クラブやライブハウスはもちろん、社交ダンス教室などであっても風営法違反になってしまう。時代とのズレだけでなく、規制されるべき「ダンス」の定義があまりに曖昧であることも問題だ。
しかしまだ改正案の内容がどうなるか、「ダンス」に対する定義、「性風俗の乱れ」にあたるとする定義をどうするかは不透明なままだ。超党派の議員連盟からダンス営業を規制から外す改正案もまとめられていたが、今国会では見送られている。また、近隣への騒音被害や未成年の飲酒、ドラッグなどの問題が一部で起きていることも事実であり、それらをどう調整するかも論点となるだろう。表現や文化には常にトラブルが付いて回る側面があり、当事者が自浄作用を働かせながら、文化を成熟させていく必要があるだろう。法律はその自浄作用を促進するものであるべきであり、決して混乱させたり阻んだりするものであってはならない。「踊ってはいけない国」という言葉まで生まれてしまったが、風営法の改正によりその言葉が過去になることを願う。(編集担当:久保田雄城)