パチンコ税の導入は可能か 越えるべき利権のハードル

2014年06月28日 21:35

 安倍首相が決定した法人税実効税率引き下げに伴う税収減の穴埋めとして、パチンコ税の創設という案が浮上している。実現まではハードルが多そうだが、1%の課税でも2千億円の財源が生まれるとの試算もあり、注目が集まっている。

 そもそも日本では公営ギャンブルしか認められておらず、競馬・競輪・競艇・オートレースがそれに当たり課税対象ともなっている。しかし、パチンコは明らかにギャンブルでありながらも、風営法の管轄内での遊技場となっているため、消費税などはかかるものの、その他の課税対象からは逃れてきた。パチンコ業界は、客・パチンコ店・景品交換所にて、金銭・出玉・景品を交換することによって最終的に現金化する「三点方式」を取っている。これは建前上合法となっているが、ほとんどの場合パチンコ店と景品交換所は同業者であり、実情は違法賭博・違法換金に当たる。

 こうしたことが長年黙認されてきた理由は、パチンコ業界の利権問題に他ならない。一部政治家への献金元や、警察をはじめとした公務員の天下り先となっている現状があり、パチンコ業界への課税や枠組み再編は難しいとされてきた。しかし、こうした動きに変化が起こり始めている。発端は、自民党・日本維新の会・生活の党が提案する公営カジノの創設だろう。公営カジノを作ることで換金の合法化を行い、パチンコもそれに合わせ適した法律の中に組み込む狙いがある。事実上の違法ギャンブルが国中の都市に存在する姿は海外からも批判や疑問の声が多く、東京五輪までにそうしたイメージを払拭したいという思惑もある。また、自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」では、換金の法制化やパチンコ税導入の推奨に関する勉強会なども開かれている。

 もちろん問題は利権のことだけではない。今言われている案では、「換金時に課税」という方式のため利用者から徴収することになる。もちろんそれでも大きな財源にはなるが、業者自体への課税ではない。あくまで単なる財源として利用者のみを対象とするのか、業界の再編まで見据え業者への課税も考えるのかも議論の分かれ目となるだろう。

 これまでの慣習や利権問題から、越えるべきハードルは多そうだが、半世紀以上「禁域」だったパチンコ業界にメスが入る意味は大きい。導入を推奨する議員の方々には、時間がかかっても実現につながるよう、「パチンコ税」に関する議論をこれからも国会にて盛んに取り上げてほしい。(編集担当:久保田雄城)