本誌の電子配信と同時に創刊されたWEB雑誌「少年ジャンプ+(プラス)」では、「DRAGON BALL」や「DEATH NOTE」などの過去ヒット作や、「ジョジョの奇妙な冒険」の作者・荒木飛呂彦氏の新作読切を無料配信するなどして、話題を呼んでいる。漫画好きはこちらも要チェックだ。
集英社が発行する少年漫画誌・週刊少年ジャンプが、9月22日発売号から、紙媒体と同時に最新号の電子配信をスタートさせた。日本になかなか根付かない電子書籍文化だが、それを変える一手になるのでは、と注目が集まっている。
週刊少年ジャンプが始めたのは最新号の電子書籍配信で、紙雑誌発売日の朝5時にはダウンロードが可能だ。価格は300円(税込)で、紙媒体255円よりも45円割高。ただし、その分『ONE PIECE』のフルカラー版、『NARUTO』のカラーイラスト特集など、電子版ならではのサービスを楽しめる。また、単体では割高だが、1ヶ月単位の定期購読が可能で、そちらなら1ヶ月900円となり、紙媒体で毎週買うのよりも100円ほど割安になる計算だ。また、10号分ほどのバックナンバーも電子書籍で購入可能となっている。同時にWEB上の新雑誌「少年ジャンプ+(プラス)」も創刊し、宣伝効果を高めている。
出版業界、特に雑誌業界の不況は年々深刻な状況になっており、漫画雑誌日本一の発行部数を誇る週刊少年ジャンプでも、全盛期には600万部以上発行していたのが現在では250万部前後となっている。コストを減らし、またインターネット時代の娯楽消費スピードに追い付くためにも、雑誌の電子書籍化は早くから論議があったが、そこにはいくつかの問題があり、今回のジャンプのような本格的な配信を行う雑誌は少なかった。
問題の1つは違法コピーだ。デジタルデータ化してしまえば、いずれ簡単にコピーが出回ってしまう。他には広告収入が減る可能性や、紙媒体から電子書籍に移行する期間を耐えるだけのメディアの体力も問題視されていた。
週刊少年ジャンプの電子書籍配信は、それらの問題をクリアしたというよりは、抱えたままやっていこうという挑戦が見える。事実、違法コピー問題は、すでに数年前から雑誌発売日の数日前にはネット上にネタバレが出回っている状態だ。電子配信は、それを止める打開策がないなら、公式がネット解禁をすることで対抗してやろうという策にも思える。
紙媒体と電子書籍を同時に出す体力面も、週刊少年ジャンプという巨大メディアだから可能な部分もあるだろう。しかし、この試みが電子配信に踏み切れないまま、寿命を縮めてしまっている日本の雑誌業界を変える一歩になるかもしれない。書籍の中でも、回転の早い雑誌が最も電子書籍に向いていることは確かだ。ジャンプの挑戦が成功すれば、それをモデルケースに他の漫画雑誌や、週刊誌が電子配信に踏み切る可能性も高い。ジャンプの冒険がどうなるか、期待して見守りたい。(編集担当:久保田雄城)