香港は、現在中国共産党下で限定的な自治を行っている「一国二制度」状態。将来的により民主的な自治が行われることが、若い世代を中心に強く望まれている。大学生を中心に起きている民主化デモの動きは、さらに下の世代の中高生、そして上の世代にも波及していっている。
香港で起こっている民主化デモと、それに対する鎮圧活動が激化している。9月28日には、民主派排除に抵抗するデモに約2万人(主催者発表)が参加。政府総本部周辺道路や金融街を占拠し座り込みを行い、民主化の推進を訴えた。これに対し警官隊は催涙弾を使用するなど実力行使での排除を行い、逮捕者も出るなど大規模な混乱が続いている。
事の発端となったのは、8月31日に行われた中国の全国人民代表大会だ。この国会で、2017年に行われる予定の香港行政長官選の立候補資格から、民主派を事実上排除する制度の導入が決定された。香港は現在中国共産党下で限定的な自治を行っている状態で、将来的には普通選挙や、より民主的な自治が行われることが若い世代を中心に望まれてきた。しかし今回決定された選挙制度では、中国本土による支配が強まるだけだと批判が起きている。
この選挙制度決定に対し、香港の急進民主派が9月1日に抗議を行ったが、翌2日にはその急進民主派19人が逮捕された。こうした一方的なやり方に民主派団体が怒り、デモ活動につながっていった。
デモは若い世代を中心に拡大し、9月22日には大学生を中心に授業ボイコットと民主化運動を開始。中心となった香港中文大学には1万人を越える学生が集まったという。そこから1週間以上に渡り、座り込みなどのデモ運動は続き、参加者には10代の中高生も増え、数もどんどん増え続けている状況だ。
今回のデモの特徴の1つとして、暴動などの破壊行為は行われていないことが挙げられる。人数は増え民主化の主張を叫んでいるが、傘などで警察からの攻撃を防ぎ、「武器を捨てよ」というプラカードを掲げるなどの平和的な行動で、周辺の店舗や車両などを破壊するような行為には至っていないという。警察とのバリケード周辺では、多少の衝突は起こっているようだが、民主化を訴える若者たちはあくまで平和的で、対等な話し合いを望んでいるようだ。
それに対し政府・警察側はデモ活動を「不当な占拠」とし、催涙弾の使用や一部学生の逮捕も行った。逮捕者の中には10代の少年少女もいたと伝えられている。このことが、さらに政府・警察への不信を招いているようだ。9月28日深夜には、負傷者が出たことや「これ以上の占拠は発砲も辞さない」とする警察側の圧力もあり、デモは一時解散となったが、現在も各地で抗議活動や警察との衝突は続いている。
デモ参加者からは「まるで天安門事件の現場のようだ」との声も伝えられた。香港政府及び中国共産党側は、強硬な排除行動ではなく、真の民主化を望む若い世代の声に耳を傾けるべきだろう。未来を自分たちの手でつかもうと、平和的に声を上げる若者たちを踏みにじってはならない。(編集担当:久保田雄城)