8月20、21日の2日間、スイス・ジュネーブで国連人種差別撤廃委員会による対日審査が行われ、在日韓国・朝鮮人らを対象にしたヘイトスピーチに対し、「包括的な禁止法が必要」と勧告が行われた。これに対し日本政府は表現の自由との整合性を考慮し、法規制に対しては保留の意志を表明。
8月20、21日の2日間、スイス・ジュネーブで国連人種差別撤廃委員会による対日審査が行われ、在日韓国・朝鮮人らを対象にしたヘイトスピーチに対し、「包括的な禁止法が必要」と勧告が行われた。これに対し日本政府は表現の自由との整合性を考慮し、法規制に対しては保留の意志を表明したが、国連委員からは「実際に叫ばれている内容は非常に過激で、表現の自由の保護には抵触しない」と批判の声が上がった。
韓国や中国との関係が悪化し、両国内での反日デモなどの報道も増えた。中には非常に強烈な内容もあり、意識的・無意識的の差はあるにせよ、中韓への嫌悪感や苦手意識が高まっている人も多いだろう。それがはっきりと顕在化したのが、この1~2年の間に増えた「ヘイトスピーチ」だ。主に在日韓国・朝鮮人に対し、「日本から出ていけ」などの言葉で排外デモを行い、時には暴力的威嚇を示唆する非常に過激な言葉を使う場合もあるという。
国連は、デモの内容が表現の自由を越えた威嚇行為にまで及んでいること、またこうした行為を本来注意・警告すべき立場である警察が、「公認されたデモだから」という理由でデモ隊側を保護していることの不自然さなどを挙げ、強く批判を行った。また、日本国内にもこうしたヘイトスピーチのデモを「人種差別」、「行き過ぎだ」とする声も多く、ヘイトスピーチを止めるためのカウンターデモも多く行われている。
ヘイトスピーチや、それに呼応しネット上で痛烈に中韓批判を訴えるネトウヨ(ネット右翼)は、ここ数年で一気に増えた印象があるが、それまでは在日韓国・朝鮮人への差別はなかったのだろうか。答は「差別はあった」だ。これまでもそうした差別はあったが、それはあまり公に行ったり口に出されたりするものではなかった。たとえ差別意識を持っていたとしても、そう考えるのは恥ずかしいことだ、と自己で判断する分別や品性が日本人にはあった。
文化も違えば歴史認識も違う。無理に仲良くしろとは言わない。だが、韓国にも中国にも、同じように自国の反日感情を行き過ぎと感じ、冷静さを持つべきだと考えている人々はたくさんいるはずだ。日本人も今一度、分別と品性を取り戻してほしい。誰かに声高に「出ていけ」と叫ぶことは、本当に理性を持った人間のやることなのか。「韓国や中国は嫌な国」というイメージは本当にあなたが自分の頭で考えた結論なのか。政府間の関係悪化や報道、ネット上の空気から生じる集団心理に飲み込まれてはいないか。
国連に言われるまでもなく、ヘイトスピーチなどという人種差別行為自体を起こさないのが日本人の誇らしい国民性ではなかったか。「ヘイトスピーチは有りか無しか」、「お前は右か左か」といった幼い論理ではなく、そうした理性的な国民性について、今一度考えてみてほしい。(編集担当:久保田雄城)