ブラジル政治の混乱 もっとも大切なイベントの前に

2014年06月08日 19:59

 今月、ブラジルでサッカーワールドカップが開催される。ブラジルは自他ともに認めるサッカー王国である。これまでも、ペレ、リベリーノ、ジーコ、ロマーリオ、レオナルド、ロナウド、ロナウジーニョ、ネイマールなど世界的名選手を輩出してきた。もちろん今回も優勝候補である。世界中にプロサッカー選手を輸出しおてり、日本でも多くのブラジル人がプレーし、日本のサッカー文化の定着に貢献してきた。

 そのサッカー王国ブラジルが混乱している。世界的なイベントを開催するのにもかかわらず、関連するインフラ整備が完了していないのは、国民性から言って仕方ないと納得してしまう部分はあるが、先月15日には、 抗議デモやストライキが発生した。教師や金属産業労働者、地下鉄職員、警察までもストを起こした。日本の初戦が行われるレシフェでは軍警察がストを起こし、その結果、住民が暴徒化する動きも見られた。実は昨年もバスの運賃値上げに端を発し、200万人を動員したとされる大きな抗議運動が起こっている。いったい何が起こっているのか。

 まずは経済を見てみよう。2000年代、ブラジルの経済は高成長を遂げた。00年代後半は平均4.4%の成長。00年に 500 億ドル程度だったブラジルの輸出額は11年には 2,500億ドルに達したほど。資源需要の拡大が主な要因とされる。その経済をカジ取りしたのが03年に発足したルーラ大統領。「飢餓ゼロ」計画を掲げ、貧困家庭の生活水準の改善を成し遂げた。10年の選挙で女性大統領として初めて選出されたジルマ・ルセフ大統領は、中道左派政党労働者党出身。基本路線はルーラ政権を継承しており、現在の支持率は40%もある。

 こうした状況にあるにもかかわらず、デモが起きた。その原因は、インフレを政府が適切に対処できていないことだ。ブラジルでは10年からインフレ率は5%を超え、13年は6%。インフレで物価が高くなるのに給料は据え置かれ、ワールドカップによってもたらされる経済発展の期待は実感できない。ワールドカップに110億ドルとも115億ドル(36億ドルがスタジアム建設)がかかっているのにとの思いもあるようだ。ちなみに、スタジアム建設経費が当初の30億円から増大しつつあることも記しておこう。

 サッカーやお祭を愛するブラジル人たちにとって待ち遠しいワールドカップ。世界的にも注目を浴びるイベントに泥を塗る行動をとらざるをえなかったのはなぜか。社会の側面にも目を向けなければいけないだろう。(編集担当:久保田雄城)