総選挙が終わっても市場は休むことなく、一気に日経平均1万円の大台に乗せる。
16日の総選挙は自民党が大勝し政権に復帰。連立を組む公明党と合わせて325議席を確保した。連立与党が衆議院の議席の3分の2以上を占め再議決ができるので、第二次安倍内閣の政権運営の安定度が増した。
朝方の為替レートは一気にドル円84円台、ユーロ円110円台に乗せる円安で、株高の条件は揃った。17日の東京市場は日経平均が158.12円高の9895.68円で始まり一時9900円台にタッチしたものの、その後はドル円が一時83円台に戻った動きもあり、売買が活発にもかかわらず9870~9900円の狭いレンジでもみあう。大引けの20分ほど前から先物主導で下落し終値は91.32円高の9828.88円で、8ヵ月半ぶりに9800円台に乗せたものの3ケタ上昇は維持できなかった。売買高は28億5200万株、売買代金は1兆5343億円と大きかったが、前場にやや偏っていた。
円安を好感した電機や自動車や鉄鋼など輸出関連株も、公共投資関連の建設、不動産も、追加金融緩和期待の銀行、証券も幅広く買われた1日だった。シャープは32円高で300円台乗せ。売買高は2億3560万株でトップ。コカ・コーラ販売会社4社の統合のニュースでコカコーラ・セントラルは21円高、三国コカ・コーラは100円高と買いを集めた。ファーストリテイリングは株価を再び2万円台に乗せて年初来高値を更新。伊藤忠商事は2円高。14日にスターフライヤーの筆頭株主になったと発表した全日空は1円安だが、スターフライヤーは210円高と買われた。
東京電力は50円高の202円でストップ高比例配分になり値上がり率、売買高2位、関西電力も一時ストップ高で値上がり率6位、売買代金3位。原発メーカーの東芝、日立、原子炉圧力容器を製造する日本製鋼所が上昇し、原発関連機器メーカーの木村化工機は一時ストップ高の61円高で値上がり率4位と、再稼働期待で原発関連銘柄が人気を集めた。
売られた業種は繊維、パルプ・紙、食品など。日本製紙Gは30円安。今年度の営業利益4割減と報じられた旭硝子は15円安で、ともに大型株が揃って上昇する中でカヤの外。新生銀行は4円安。太陽誘電は値下がり率3位、リョービは4位と大きく下げた。18日の東京市場は日経平均が19.99円高の9848.87円で始まった。NYダウは財政の崖問題の進展を好感して100ドルの大幅高だが為替のドル円が少し円高に戻して83円台になった分、上げ幅は抑えられた。「薄商いで値動きの小さい火曜日」でモタモタするかと思いきや、前場で9900円台にあっさり乗せ、尻上がりに上昇。新政権への期待が強く、先物の買いも主力株の現物買いも集まった。午後1時前に「自民党本部で安倍・白川会談」と報じられた後場は円安が進行して日経平均も9950円を突破し、最高値9967円と1万円まであと33円まで迫った。終値は94.13円高の9923.01円で、8ヵ月半ぶりに9900円台を回復。売買高は34億3000万株でメジャーSQ日の14日を超える活発な商いになった。売買代金は1兆7423億円。売買高5位に入った野村HD、大和証券G、光世証券など証券株が追加金融緩和期待でにぎわい、三菱UFJ15円高、三井住友FG91円高と銀行株も堅調。パルプ・紙も反転した。シャープは6日続伸して売買高、売買代金とも1位で、東京電力も続伸した。パナソニック、ソニーは下げた。
自動車株はトヨタが年初来高値を更新し、ホンダ、いすゞも上昇。ソフトバンク、ファーストリテイリングは上がったが、ファナックは売られた。精密株のキヤノン、リコー、中国関連株のコマツは非常に好調だった。建設株は大成建設、清水建設など大手ゼネコンも買いを集め、不動産大手の三井不動産、三菱地所、住友不動産は後場、「安倍・白川会談」のニュースで盛り上がって年初来高値を更新した。電力株は東電以外は関西電力、中部電力、東北電力は下げた。セブンアイHDなど小売も総じてふるわなかった。電子部品関連で、日東電工が250円安で値下がり率4位に入り、日本電産、村田製作所、TDKが揃って3ケタの下落。太陽誘電も続落。パソコンの需要減速懸念や前日のアップル株の下落が影響したようだ。
NYダウは115ドル高と連日の3ケタ高。為替はユーロ円が111円台に乗せ、日経平均先物で一足早く1万円の声が聞こえ、19日の日経平均始値は102.39円高で10025.40円をつけ、いきなり待望の1万円に乗せた。その後、一度も1万円を割り込まずに値を切り上げ、終値は239.39円高の10160.40円で「高値引け」。終値1万円以上は4月3日以来だった。主力大型株中心に買われて上げ幅は今年最大を記録し、値下がり銘柄211に対し値上がり銘柄は1419。そのうち年初来高値更新銘柄は167と1割以上を占めた。売買高は40億株、売買代金は2兆円の大台に乗せた。
値上がり幅が大きい業種は保険、鉄鋼、パルプ・紙、非鉄金属、証券、銀行などで、値下がり業種はJALが55円下げた空運のみ。鉄鋼は新日鉄住金の13円高が貢献した。「2%の物価上昇」目標の導入が有力な日銀の金融政策決定会合の結果を先取りしたようにメガバンクが買われ、三菱UFJは25円高で売買代金1位。みずほは6円高で年初来高値を更新し売買高1位、三井住友FGも122円高で年初来高値を更新し売買代金5位に入った。ノンバンクのオリコも28円高で値上がり率6位。証券株も野村HDが年初来高値を更新した。東証REIT指数が連日年初来高値を更新する不動産も好調。自動車株はトヨタが130円高で年初来高値を更新し、ホンダも178円の大幅高だった。
自民党の高村副総裁が「補正予算は10兆円程度必要。公共事業を前倒しで思い切ってやる」と明言して火に油を注いだ建設株は年初来高値更新が続出。値上がり率ランキングには、1位に東急建設、3位に三井住友建設、4位に世紀東急建設、5位に大林道路が入った。大手ゼネコンも前日に引き続き好調だった。下落が目立ったのがシャープで、終値は20円安の307円で値下がり率2位。それでも2億2152万株が取引され売買高と売買代金は2位。東京電力は7円安。ソフトバンク、京セラも下げた。
韓国の大統領選挙は与党のパク・クネ候補が当選。基本的に財閥系大企業に有利な現政権の経済政策は大きく変化しないと考えられるので、世界で韓国企業と競争する日本企業には不利な結果と言える。NYダウは財政の崖問題が下院議長の発言で後退し98.99ドル安。朝方の為替は円高方向に戻しドル円が一時84円割れになりユーロ円は111円台前半。外部条件が悪く20日の日経平均は1万円の座を明け渡すかと思われた。始値は67.29円安の10093.11円だったが、その後は下げても10050円近辺で1万円を割らない。大型主力株の下落が相次いでも海外の機関投資家の先物買いが続き底堅かった。後場の午後1時過ぎに日銀の政策決定会合の結果が伝わると一瞬下げて元に戻り、しばらくして今日の最高値をつけた。それでも2時台には為替が円高に動いたため10028円まで崩れ、終値は121.07円安の10039.33円と、大幅安でも1万円台を維持して取引を終えた。売買代金は2兆円を超えて取引は活発だった。
株式市場が複雑な反応を見せた日銀政策決定会合の結果は、買入基金を10兆円積み増して101兆円にするものの、増額対象は長短の国債に限られ、「物価上昇率目標」の導入は1月の次回会合までに検討して具体案を詰めるという内容。新貸出支援制度は融資残高を増やした銀行に増加分と同額の低利融資を6月から四半期に1回、合計5回行って総額は15兆円規模というもの。為替市場は乱高下の後、円高で反応した。
買われた業種は証券や銀行、電力、商社など。売られた業種は鉱業、精密、情報・通信、自動車、電機、パルプ・紙など。銀行、証券大手が買いを集め、三菱UFJ、三井住友FG、野村HDは年初来高値を更新した。ファーストリテイリング、ソフトバンク、ファナックは揃って3ケタ安で日経平均を押し下げた。自動車株はトヨタが年初来高値を更新した一方、日産は野村証券が投資判断を引き下げたために売り浴びせられ値下がり率3位の62円安。三菱自動車も過去最大のリコールが判明し大幅安だった。前日に業績予想を下方修正したカプコンは176円安で、シャープも続落。防衛省が発注した防衛装備品の経費水増し問題で返納額が500億円規模と報道された三菱電機は、前場で売られた後プラスに転じた。
物価目標を導入した前日の白川総裁の記者会見は好材料になったようで、円高は長続きせず朝方のドル円は84円台半ば、ユーロ円は111円台後半。財政の崖問題に明るい見通しが出てNYダウは59ドル高。それを受けて週末21日の日経平均始値は106.25円高の10145.58円と100円以上の反転で始まった。ところが、前場後半から上値が重くなりズルズルとマイナス圏まで下落し、前引け前に一時1万円を割り込む。後場は1万円を割って始まり、そのまま大台を回復することなく99.27円安の9940.06円で今週の取引を終えた。売買高は1兆9056億円だった。
上昇した業種は不動産、鉱業、石油など。下落した業種は鉄鋼、ゴム、自動車、非鉄、電機など輸出関連が目立った。日経平均と同じ動きだったのがトヨタで、前場に年初来高値を更新した後に急落し80円安で終えた。日経平均寄与度の高い京セラ、ファーストリテイリング、ファナックが揃って3ケタ下落。銀行・証券株は大量の売り買いが交錯し、売買代金1位の三菱UFJは2円安、2位のみずほ は変わらず、5位の三井住友FGも変わらず。4位の野村HDは2円高で引けて8連騰継続中。売買高ランキング上位に毎日顔を出すシャープは7円安。日産は続落し19円安。東京電力は続落したが、関西電力は34円高と買われた。平均株価は下がったが東証REIT指数のほうは1.75%上昇し、7日続伸で連日年初来高値を更新中。不動産は騰落率でトップになり、三菱地所は53円高、住友不動産は76円高と買いを集め、東京建物不動産販売が値上がり率1位、同じグループの中核企業の東京建物が10位に入った。
財政の崖問題は採決を結局延期して米議会がクリスマス休会に入ったため、ザラ場中に為替がドル円が83円台後半、ユーロ円が110円台後半の円高に振れたが、やっぱり今日は「利益確定売りの金曜日」。日本では振替休日を含めた三連休の前、海外ではクリスマス休暇前で、利食いしていったん手じまいしたいムードが強まった。上昇相場にブレーキをかけたのは、財政の崖問題による円高と投資家の利益確定売りだった。
来週の展望 「掉尾の一振」で1万円台で年を越せるか
今週は総選挙後の一服もなく、日経平均が一気に1万円に乗せた強い相場だった。来週は月曜日の24日は振替休日で休場なので取引日は4日間。26日の水曜日に特別国会が召集され安倍晋三自民党総裁が首班指名を受けて組閣を行い、第二次安倍内閣が正式に発足する運び。財財務大臣兼金融担当大臣は元首相の麻生太郎氏が有力。ただ、閣僚が就任記者会見で余計なことを言って、新聞に「新内閣、不安な船出」などと書かれて27日の株価を下げたりしないように願いたい。28日の金曜日は大納会だが売買は午後3時まである。6日間の休場を前に利益確定売りが多くなる日だが、はたして1万円の大台で締めくくれるか。
国内の主要イベントはほぼ終了し、買われる要素も売られる要素も乏しくなる上、5週連続で買い越して東京市場を強力に支えた海外の機関投資家からの資金流入もさすがにクリスマス休暇で減ることだろう。そのため東証1部売買代金が1兆円を割る日が出てくるかもしれない。昨年は12月27日に年間最少を記録している。それでも再び1万円台に乗せて、「掉尾の一振」で3月27日の年初来高値10255.15円を更新し、さらに大納会の28日の終値まで1万円以上の水準を維持できれば、激動の2012年を末広がりでめでたく終えることができる。そのカギはやはり為替レートで、ドル円が85円台に乗れば有望だろう。
そこで気になるのがアメリカの「財政の崖」問題だが、民主党と共和党が妥協点を探る交渉はけっこう進んでいて、もし合意できれば懸念が消えて東京市場は一段高になる。合意できなくても、決裂して振り出しに戻るわけではなく、知恵は出せるはずだ。時間切れを見越した部分的な「激変緩和措置」に合意して、「崖」の角度をゆるめる可能性もある。NY市場は24日は午後1時までの短縮取引で25日はクリスマスで休場。年末年始の休場は1月1日だけで、2日から2013年の取引が始まる。アメリカ連邦議会下院の議員さんたちもクリスマス休暇が明けたら真剣にやってくれると期待したい。
国内の経済指標は、25日に企業向けサービス価格指数、27日に貿易統計と住宅着工戸数が出て、28日に失業率、有効求人倍率、全国消費者物価指数、鉱工業生産速報値と、大納会の日にけっこう重要な指標が集中している。改善すれば日経平均1万円台維持に貢献するかもしれない。海外の経済指標はヨーロッパや中国はお休みで、アメリカでは24日に耐久消費財受注、26日にS&Pケース・シラー住宅価格指数、27日に新築住宅販売と消費者信頼感指数、28日にシカゴ購買部協会景気指数が出る。24日で終わるクリスマス商戦全体の全米小売売上額速報値は、マスターカードの調査部門スペンディングパルス社から来週中に発表される。アメリカの経済指標はおおむね良い数字が続いているので、あとは財政の崖の問題だけだ。国内外で選挙が多かった2012年は、最後の最後まで政治に翻弄される1年だった。(編集担当:寺尾淳)