多様化する書籍寄贈による将来への投資とは

2012年07月13日 11:00

 日本出版学会のデータによると、2010年の出版物推定販売額は1兆8748億円と前年比3.1%減、書籍新刊点数は、74714点で4.9%の減なっている。2000年からの10年間で書籍の販売金額は15.4%、雑誌は金額で26.1%の大幅減少となっており、未だ底が見えない状況にある。こうした中、近年は社会貢献活動の一環として、また昨年以降は復興支援策として書籍を寄贈する企業は増加しており、その手段も多様化している。

 山田養蜂場は、1999年から「みつばち文庫」として全国の小学校に書籍を寄贈。この「みつばち文庫」は、応募者の中から抽選で、母校・ゆかりのある小学校・お世話になった小学校(3000校)へ、山田養蜂場が応募者に代わって「みつばち文庫」を1校に1セット、10冊前後を届けるというものである。これまでの活動で延べ42000校以上に約50万冊の書籍を寄贈しており、14回目となる今年は、8月15日まで書籍を寄贈したい小学校を募集している。

 また岩手県の陸前高田市は、バリューブックスとの協働により、本の寄贈を図書館の再建に役立てるプロジェクトをスタートさせた。このプロジェクトは、個人や企業から寄付された書籍をバリューブックスが査定・仕分けを行い、その買取相当額が図書館の再建費用として寄付されるというもの。仮設図書館等の関係者や利用者から要望があった書籍等は、当該仮設図書館等に寄贈される仕組みとなっている。

 さらに、GMOインターネットグループで日本語キーワード検索サービス「JWord(ジェイワード)」を運営するJWordは、社会貢献活等の一環として「子供たちに素敵な本との出会いをプレゼントしよう!」を実施。一般のインタネットユーザーによる仮想募金で全国から募集した小学校5校にそれぞれ20万円相当、合計100万円分の書籍を寄贈する活動で、今年も先月に第6回の寄贈先5校が発表されている。

 いずれも第一義的には社会貢献活動であるが、殊、子供に向けた書籍の寄贈はその効果が波及的に広がり、結果的に、出版不況と言われる中で将来の出版業界を支える基盤ともなる活動である。同様の、人に対する投資が、社会や企業・業界への投資となる活動が益々拡大することを期待したい。