ルネサスが、高電圧・大電流を扱う機器向けに使用するパワー半導体(IGBT)として、同社の第7世代IGBTシリーズの製品化を発表。太陽光発電のパワーコンディショナや産業用モータの大電流インバータ向けに、650V対応の「RJH/RJP65Sシリーズ」と1250V対応の「RJP1CSシリーズ」など13製品のサンプル出荷を開始、9月から順次量産を開始する。
高電圧・大電流機器における省電力化が進められている中、電力を直流から交流に変換する際に使用されるIGBTにも大幅な低損失化が要求されている。しかし、低損失化のキーとなる飽和電圧(動作状態におけるコレクタ-エミッタ間の電圧。小さいほど、導通損失が小さい)は、大電流機器で要求される高い負荷短絡耐量(IGBTに無制限に電流が流れた場合、破壊しないで耐えられる時間)とはトレードオフの関係にあるため、太陽光発電のパワーコンディショナ等で要求される負荷短絡耐量10マイクロ秒を実現した場合、さらなる低損失化は困難となっていた。
これらに対し新製品では、飽和電圧を650V品の場合で同社従来の1.8Vから1.6Vに、1250V品では2.1Vから1.8Vに低減。破壊耐量である負荷短絡耐量も改善し、10マイクロ秒(μs)以上を実現している。また、様々な機種に対応すべく、30Aから200A(Tc=100℃時)まで、業界標準パッケージであるTO-247Aを採用した「RJH65Sシリーズ」と、ユーザの基板への直接実装や周辺部品とのモジュール化等に対応するためウエハ/チップ出荷形態を標準仕様とした「RJP65Sシリーズ」および「RJP1CSシリーズ」をラインアップしている。
矢野経済研究所によると、2011年パワー半導体市場の29.5%を占めたIGBT。今後も新エネルギーや次世代自動車向けに順調に需要拡大を続けると見られているが、一方で、先日も三菱電機が家電・産業機器向けSiCパワー半導体モジュール5品種のサンプル提供開始を発表するなど、次世代パワー半導体と呼ばれる製品も台頭してきている。転換気にあるとも言えるパワー半導体市場において、経営再建に揺れるルネサスがどこまで存在感を示していけるのか、今後の動向に注目が集まるところであろう。