昨年の震災以前は、大気中のCO2を増加させないカーボンニュートラルな資源として、注目を集めていたバイオマス。平成18年に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」では、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されるバイオマスは、バイオエタノールなどに代表されるように燃料やエネルギーとしても利用可能なことから再生可能エネルギーとしても注目を集め、研究や開発・製品化などが活発化している。
5月にはブリヂストンが、味の素からバイオマスから生成したイソプレンの提供を受け、合成ゴムの重合に成功したと発表。さらに6月には東レが、再生可能化学品および先端バイオ燃料のリーディング企業である米国のGevo社との間で、バイオマス原料由来のパラキシレンを一定量引取るオフテイク契約を締結したと発表。この契約締結によって、完全バイオマス原料由来ポリエチレンテレフタレート(完全バイオPET)に関して世界で初となるパイロットスケールでの実証が可能になったという。
このように、バイオマスを資源とした開発が進む一方で、エネルギーとするための研究・開発も進んでおり、中でも、燃料生成効率が他のバイオ燃料と比較して高いとされている藻類は、バイオディーゼルオイルの抽出取組が世界的に活発化し、バイオエタノールを抽出する技術開発も進められている。
日本においても、JX日鉱日石エネルギー・IHI・デンソーの3社が発起人となり、微細藻燃料開発推進協議会を設立。微細藻燃料は、エネルギー資源の多様化や、エネルギー自給率の向上に貢献でき、また、既存の石油製品と同等に扱えるため、新たな燃料供給インフラの投資も不要といった多くの利点が期待されているものの、実用化にあたっては、培養、油分の抽出、燃料化といった各工程の技術開発の課題を解決し、一貫生産システムの構築を行うことが必要であるという。そのためには、産官学のオールジャパンで取り組むことが必須であることから本協議会の設立を決定、6月27日に民間企業10社を主体として取り組みがスタートしている。
原理力を除くエネルギー自給率が4%という日本の現状を考えると、国等がバックアップしてバイオマスの研究・開発・実用化にもっと注力すべきではないだろうか。富士経済研究所の調査によると、2010年度のバイオマス利活用市場は前年度比172.8%の1218億円。これが2015年度には、2010年度比211.7%の2579億円にまで拡大すると予測されている。カーボンニュートラルな資源でありながら、エネルギー問題も解決し得るものであるだけに、この予測を上回る速度での市場拡大を期待したい。