ガンホー・オンラインエンターテイメント<3765>が、同社の大ヒットスマートフォン向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」(通称:パズドラ)の中国での配信を始めると発表した。配信時期は2015年の半ばを予定し、中国の大手インターネットサービス社・騰訊控股(テンセント)との提携で事業を進める。ガンホーはこの10~11月、アメリカのプレイフォン社や中国のチュコン社など、海外のスマートフォン事業社の株式買収を進め、世界進出への足場を固めつつあった。満を持しての中国配信発表は市場からも注目を集めている。
「パズドラ」は、現在世界33の国と地域で展開、累計3200万ダウンロードを記録(11月21時点・ガンホー発表)しているビッグタイトルだ。タッチパネル上で、パズルの色を合わせ消していくことでモンスターに攻撃する。他ゲームよりいち早くスマートフォンの操作性を活かした点や、こまめに行われるイベントやアップデータで飽きさせない点、魅力的なデザインのモンスターやキャラクターなどが、大ヒットの秘密だと言われている。中国配信版では、基本的なゲーム性はそのままに、キャラクターデザインや物語を中国人好みに改変する予定だという。
ガンホーの中国進出は、市場拡大はもちろん、中国国内で横行する模倣ゲーム、いわゆるパクリへの牽制・防止策もあると考えられる。中国では現在急速にスマートフォンが普及し、スマホ向きゲームの開発・利用も盛んだ。しかし、オリジナルのゲームだけではなく、明らかに日本などでヒットしているゲームの基本設定を丸写しし、設定やデザインだけ中国風にしたゲームも多い。中国国内でも、あからさまな模倣に対しゲームユーザーからは批判の声が上がっている。
しかも困ったことに中小のメーカーでなく、大手のゲームメーカーやインターネット会社がそうした模倣ゲームを配信している例も多い。ガンホーが提携先に選んだ騰訊控股(テンセント)は、多くのユーザーを抱える大手でありながら、実はそうした模倣ゲームを多く出してきた会社でもある。そこと提携することによって、逆に中国での本家パズドラの運営権利を交渉材料に、パクリに対し確実な防止策をとることができる。
同じくスマートフォンゲームで大ヒットしているミクシィ<2121>の「モンスターストライク」も、同じように騰訊控股(テンセント)と提携を行うことで、模倣ゲームへの牽制、防止を行っている。市場拡大はもちろん、中国ゲーム市場の健全化もこうした進出の狙いの1つだろう。日本のスマートフォンゲームの市場拡大だけでなく、中国市場の健全化にも期待したい。(編集担当:久保田雄城)