積水ハウス<1928>が日本初のまちびらきを実施し、その後も多くの住宅メーカーが展開を加速させたスマートタウン。2011年をスマートハウス元年と呼称するのであれば、2012年はスマートタウン元年とでも言うべき一年であった。矢野経済研究所の調査でも、2011年度のスマートハウス関連主要設備機器の市場規模は、前年度比117.2%の6343億円が見込まれ、その市場規模は2020年度には2010年度比で236.7%にまで拡大すると予測されるほど、勢いのある市場となっている。スマートハウスやスマートタウンはこの勢いのまま、2013年以降も拡大を続けることが出来るのであろか。
先日も積水化学工業<4204>住宅カンパニーが、4月28日に発売したスマートハウス「進・スマートハイム」の12月17日時点で受注棟数が2000棟を突破したと発表。首都圏での2012年上半期の建売供給戸数が2459戸であったことを考えれば、日本全国での数字とは言え好調さは十分に伺い知れるであろう。さらに、2014年には消費税の増税が控えており、2013年も一定の需要は見込まれる。しかし、ここで立ちはだかるのがコストの壁である。
容量にもよるが、太陽電池だけでも100万円程度、燃料電池や蓄電池にも其々200万円程度の費用がかかる。補助金もあり、搭載が進めば価格も下がるであろうが、現段階では初期投資を光熱費の削減分などで償却することは難しい。また、電気自動車の車載電池を住宅に供給するV2Hシステムは、クリーンエネルギー自動車等導入対策費補助金の対象であるため比較的低価格で導入ができるが、そもそも電気自動車自体の価格が依然として高い。さらには、思うように電気自動車は普及しておらず、太陽電池や燃料電池、家庭用蓄電池との連動制御には未だ対応していないことなどにより、普及によるコスト減を見込める状況にはない。リクルート住まいカンパニーの調査によると、全国建築者・検討者のスマートハウスのための平均追加許容コストは240万円台となっている。2013年は、スマートハウスに不可欠な太陽電池・蓄電池・HEMSの3機器でこの価格を下回われるか否かが、目下の課題となるであろう。徐々に進んではいるものの、家電との連携等は、価格以上に普及を加速させる要素とはなりえないのではないだろうか。
太陽電池に関しては、既に安価な海外製のものが多く国内に流通しているが、燃料電池やHEMSに関しては、依然として国内産が主流である。しかし、このまま各機器が高価なままであれば、すぐにでも安価な海外製が市場に流入してくるであろう。単に普及を図るだけであれば問題ないかもしれないが、国内メーカーを圧迫するような事態は大問題である。かといって、高価なまま普及を促進する補助金頼みの施策では、国の財政も厳しい折、長続きしないであろう。先日、スマートハウスの普及とも関わるグリーン政策大綱(骨子)が発表されたが、耳触りのいい目標と施策が並んでいるのみで、具体性に欠けるとの評価も少なくない。消費税の増税や相続税対策などといった消極的な理由ではなく、国内メーカーも成長させるような積極的な施策での市場拡大を期待したい。それが実現しなければ、現在はスマートハウスの集合体に過ぎないスマートタウンの現状から脱することも難しいであろう。(編集担当:井畑学)