自民党小選挙区全敗 沖縄を動かした民意を無視してはならない

2014年12月19日 14:17

画・沖縄県知事選挙 現職の敗因は公約違反?

沖縄県では、今衆院選で小選挙区4区すべての自民党候補が敗れ、普天間基地の辺野古移設に反対する候補が当選した。民意が与党の移設計画と経済方針に「NO」を突きつけた形だ。美しい沖縄を守るために、政府はもちろん、私たちも沖縄の現状から目を背けてはならない。

 自公与党の圧勝となった衆議院選挙。ほとんどの都道府県の小選挙区で自民党候補が当選する中、強く安倍政権に「NO」を突きつけた県がある。小選挙区4区すべてで自民党候補が敗れた沖縄県だ。

 争点が経済政策に絞られた今回の選挙だが、沖縄県においては、最大の争点となっていたのは普天間基地の辺野古移設問題だった。11月に行われた沖縄知事選挙でも、辺野古への移設反対を掲げた翁長雄志氏が、自民党の推薦を受けた前職・仲井真弘多氏を破り当選した。さらに衆院選でも、辺野古移設に反対する候補者らが、党の枠を越えて共闘する「オール沖縄」の姿勢で自民党候補者らと闘い、全選挙区で勝利を収めた。

 沖縄で長年問題となってきたのは、米軍基地と経済のギャップだ。米軍機による騒音や火災、墜落事故、さらには米兵による暴行事件といった重大な負担がある一方で、米軍基地による雇用や経済効果という恩恵が大きいのも事実だ。そのため、これまで沖縄県内でも意見の隔たりはあった。

 自民党候補らが全て敗れたとは言え、そうした意見の隔たり、民意の迷いは得票率にも表れている。1区は当選した赤嶺政賢候補(共産)が39.8%、落選した自民の国場幸之助候補が36.6%で、票数差もわずか4000票だった。1区は基地の無い那覇市が含まれていることもあり特に大接戦となったが、基地を抱える2~4区も当選者が約60%、落選者が約40%の得票率と接戦だった。また、落選した自民党候補4人はすべて比例で復活している。

 それでも、今回の選挙で民意が以前よりも大きく「辺野古への基地移設反対・県外への移設希望」に傾いていることは間違いないだろう。これは、政府の強引な辺野古埋め立て計画への怒りや、集団的自衛権の行使容認の推進への不安によるものではないだろうか。

 今回の結果を受け、大きな問題は2つある。1つは当然、辺野古移設計画をどうするかだ。江渡防衛相は選挙後12月16日の会見で、「辺野古への移設が解決策。法令に従い、淡々と進めていきたい」と述べた。安倍首相も選挙での圧勝を受け、「国民の信任を得られた」と述べているが、少なくとも沖縄では信任を得られたとは言い難い状況だ。沖縄県民の民意を汲まず、それを黙殺し計画を進めるようなことは絶対にあってはならない。そこは誠実に向き合ってほしい。

 もう1つは、基地問題を民意に沿って時間をかけ解決していくにしても、沖縄経済をどうするかという問題がある。政府は基地依存経済を脱却するため、カジノなど統合型リゾートの導入を検討しているが、翁長沖縄知事はカジノ導入には反対で、沖縄の自然や文化を活かした観光産業に力を入れるべきという姿勢をとっている。現実的な経済の解決策も考えられなくてはならない。

 今回沖縄県民が示した「NO」は、基地の無い本州に住む人々の意識にも向けられていると言えるだろう。政府と同様、私たちも沖縄の基地や経済を巡る現状から目を背けてはならない。(編集担当:久保田雄城)