働く母親が増えている。厚生労働省によると、仕事をもつ母親の割合はこの10年で10%近く増え、母親全体の6割となった(「国民生活基礎調査の概況」)。末の子が9~11歳の母親では7割が何らかの仕事をしている。ワーキングマザーは多数派になった。
雑誌業界ではここ1~2年、おしゃれなワーキングマザーがブームだ。大人の女性向けだった『Ghrazia(グラツィア)』は今春、ワーキングマザー向けへと全面リニューアルし、高収入で魅力的な仕事をもつ母親女優やモデル、スタイリストなどを紹介している。また今夏には、自己実現的な仕事をしつつ可愛らしさも忘れない女性を対象とした『mamagirlマガール)』が創刊され、12万部が完売したという。
経済界にとって、労働者として優秀で消費意欲も旺盛な「高収入のワーキングマザー」はありがたい存在だろう。しかし実際は、多くの働く母親の収入は低い。経済協力開発機構(OECD)によると、日本では子どものいる女性の給与が同世代の男性よりも61%低く、この格差は先進国の中で最大。仕事をもつ母親の半数近くが非正規雇用であるためだ。
長時間労働が当たり前の日本企業で、小さな子をもつ母親がフルタイムで働くのは辛い。
10年前にマクロミルが行った調査では、子育てと仕事の両立上の悩みとして「子どもの病気で遅刻や欠勤することがあり、同僚に迷惑をかけてしまう」が72%で最多、「自分の時間が持てない」(63%)、「子供と過ごす時間が少ない」(59%)と続く。10年たった今でも、この悩みは変わりがないように思う。
仕事上の責任が重ければ重いほど、たとえば子どもが急に熱を出して早退する場合の罪悪感も大きくなる。同じく長時間労働の夫にも頼みにくい。だから母親たちは、低賃金でも時間の融通がきくパートタイマーを選ぶ。
多くの女性がフルタイムで育児と仕事を両立できれば、消費意欲の旺盛な「ワーキングマザー」は経済界にとって福音となるだろう。長時間労働やサービス残業が常態化する今の日本企業に、それは可能だろうか。男性の育休取得率は2.6%。道のりは険しい。