父親が100人いれば、2~3人。厚生労働省によると、男性の育児休業取得率は2.6%まで上昇し、過去最高を記録した(「平成23年度雇用均等基本調査」)。
13年前の99年、厚生労働省は安室奈美恵の夫(当時)のSAMを起用し、「育児をしない男を、父とは呼ばない。」というコピーで父親の育児参加を呼びかけた。当時の男性の育休取得率はわずか0.4%。あのポスターが衝撃を与えたのは、当時「父親は積極的に子どもと関わるより、黙って背中を見せるもの」というような意識が人々に共有されていたからだろう。
共働き率が上昇した00年代半ば以降、男性の育児参加に対する意識は急速に高まった。起業家の駒崎弘樹氏は20代だった04年、病児保育のNPO法人「フローレンス」を設立。著書『働き方革命』では、「残業・休日出勤して人生を会社に捧げる」ような働き方を過去のものだと批判する。
06年にはNPO法人「ファザーリング・ジャパン」が設立された。代表の安藤哲也氏は「父親であることを楽しむ」をコンセプトに、父親向けのセミナーや「子育てパパ力(ぢから)検定」、父子家庭の支援など多様な父親支援事業を展開している。
『プレジデントFamily』『日経Kids+』などを片手に、子どものお受験に夢中になる父親も増えた。2010年には「イクメン」が流行語大賞のトップ10に選ばれるなど、実態はともかく男性の育児に対する意識が向上しているのは確かだ。13年前の「育児をしない男を、父とは呼ばない。」というコピーも、今となっては新鮮に響く。
とはいえ近年、若者の婚姻率は下がり続けている。彼らが結婚できない最大の理由は経済不安。「男性の育児参加」以前に、「結婚して家族を作る」という、そもそもの前提があやうくなっているのだ。イクメンを恵まれた特権層にしないためにも、国だけでなく企業が積極的に、若者の労働環境を整えていくべきだろう。未婚者の労働環境を改善することは、既婚夫婦への育児支援と同じくらい重要である。