日本自動車販売協会連合会および全国軽自動車協会連合会が発表した2012年11月までの自動車と軽自動車の新車販売台数をまとめると、2012年にいちばん売れたクルマがわかってくる。11月末の時点で30万台を超えているトヨタ<7203>のプリウスがトップ。2位には2011年末に発売したトヨタ・アクアで24万台を大きく上まわっている。3位が微妙で、ダイハツ<7262>のミラ、ホンダ<7267>のNBOXの軽自動車、それにホンダのフィットが最終的に20万台を超えるあたりでランキングの上位を競っている。
2012年の9月にフルモデルチェンジしたスズキ<7269>のワゴンRは、8月までの前モデルと合わせて19万台に届き、ダイハツのタントは18万台弱とったところだろう。さらに2012年の12月にかなり思い切ったマイナーチェンジをしたダイハツ・ムーヴは、15万台まで伸びるかどうかというところ。そのほか10万台を超える販売実績を11月までに記録しているのがホンダ・フリード、トヨタ・ヴィッツ、そしてスズキ・アルトで、日産<7201>のセレナは10万台を超えるかどうかは微妙なところだ。
2012年の販売台数ベースでの人気車を追うと、アクアとNBOXの勢いが止まらないということと、フリードのヒットは特筆すべきことかもしれない。しかしランキングのトップ10~15位ぐらいまでは、だいたい予想ができた顔ぶれだ。しかしトップ10圏外に目を転じると、実はおもしろいクルマがある。たとえば2012年2月にマツダ が発売したCX-5というクルマだ。
CX-5は日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したSUVで、ガソリンとディーゼルの2種類のエンジンを用意している。特に「クリーンディーゼル」エンジンを搭載したタイプが好評なのだ。日本でディーゼルは「パワーがない」とか「黒煙が体に悪い」といったイメージが広まってしまっている。が、それは誤解で、ヨーロッパではむしろディーゼルは主流。エコ性能と環境性能が高く、しかもしっかり走れるエンジンとして、コンパクトカーから大きなセダンまでディーゼルエンジン車がラインナップされている。CX‐5でのマツダの果敢な挑戦が、それなりに成功しているところから、日本でのディーゼルに対する悪いイメージを払拭するかもしれない。国内の自動車メーカーの中には、この動きに追随する動きもある。マツダにはガソリンエンジン登録車で初の免税対象車になったデミオもあり、ハイブリットでも軽自動車でもない独自路線で着々と成果をあげている。
一方、2012年末にフルモデルチェンジしたトヨタ・クラウンも気になるところだ。とかく「セダン離れ」がいわれている日本の自動車販売だが、実はクラウンだけはしっかり売れてきた。先代のモデル末期にあたる2012年9月、10月、11月でも月間2000台を超える販売実績をあげているのだ。さらに今回のモデルチェンジで14代目になった新型クラウンは、発売にさきがけて先行受注を全国のディーラーで12月初めからスタートしていたが、1週間で5000台規模の予約があったという情報もある。
ことプレミアムクラスのセダンに関しては日本車に魅力的なモデルが少ないということが「セダン離れ」といわれる所以だろう。クラウンを含めて国産のプレミアムセダンと呼べるモデルは10車種程度しかないのだから仕方がないことなのかもしれないが、日本に正規で導入されている輸入車ブランドのセダンはそれなりに売れている。輸入車ブランドは日本にある程度の規模のセダン市場があり、しかも「おいしい」という判断をしているのは事実。2012年の秋から冬にかけてクライスラーやキャデラックも新型を投入してきた。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディといったドイツ勢、ジャガーが筆頭の旧イギリス勢、ボルボらの北欧勢やイタリアンブランド、それに北米勢を迎え撃つ国産プレミアムセダンの目立った存在といえば、クラウンほか実質2、3種のプレミアムセダンという図式が、もう何年も続いている。おそらく日本のプレミアムセダン市場の構図は、すぐには変わらないだろう。しかし今度のクラウンは、輸入車中心にセダン選びをしてきた日本のユーザーの目を、国産セダンにも向けさせるほどのインパクトはある。
2012年の自動車業界は、エコカー補助金のかけこみ需要に後押しされた面はある。ただし、もう少し細かく見ていくと、ハイブリットでもEVでもないエコ技術や、年末になって満を持して登場した新型クラウンの大胆な変化など、全くインパクトがなかった一年ということではなかったようだ。(編集担当:帯津冨佐雄)