東京農工大ら、細胞壁リグニンの分子構造を変える方法を開発 高分解性植物バイオマス創成へ

2015年01月14日 08:19

 東京農工大学の梶田真也准教授らは、植物の細胞壁に多量に蓄積するリグニンを、より分解しやすい構造に改変するための新しい技術を開発したと発表した。

 リグニンは、植物の細胞壁に含まれる複雑な構造をした高分子(芳香族ポリマー)である。木材などからパルプや化成品原料になるセルロースなどを取り出す際、リグニンを部分的に分解して取り除く必要がある。しかし、現在の高温高圧条件下でアルカリや酸を使う処理方法では莫大なエネルギーを消費する。また、リグニンを取り出しやすくする遺伝子工学技術が研究されてきましたが、リグニンを改変した植物が正常に育たないという問題があった。そのため、生育に影響を及ぼさない新しいリグニン改変技術の開発が望まれていた。

 この研究は、長岡技術科学大学政井英司教授、森林総合研究所菱山正二郎主任研究員、理化学研究所菊地淳チームリーダーらをはじめとして、国内外の複数の研究機関に所属する研究者と共同で行ったもの。同研究グループは、リグニンを分解するバクテリアsphungobism(スフィンゴビウム)sp.SYK-6株を単離し、分解反応に関わる遺伝子を網羅的に解析した。その結果、このバクテリアには、植物がリグニンを合成するために持っている代謝経路を改変するために有効な遺伝子がいくつも存在することが明らかになった。

 今回、そのうちの1つであるLigD遺伝子を植物に導入し、植物の生育に影響を及ぼすことなく、リグニン分子に特徴的なβ-O-4型構造注2)の一部を改変することに成功した。これにより、アルカリ反応液中でリグニンの分解性が向上することが期待されるという。

 また、この技術をさらに発展させ、分解性の高いリグニンを植物に蓄積させることができると、リグニンの除去に必要なエネルギーや薬品の消費を格段に減少させることで、植物からバイオ燃料やバイオプラスチックを作る際に大気中へ排出される二酸化炭素の大幅な抑制が期待される。(編集担当:慶尾六郎)