再生可能エネルギーは、その必要性は十分に認識されていると思うが、なかなか普及しない。再エネの中心的な存在だった太陽光発電は、送配電設備と電力固定買取制度の問題などから政府が新規参入の凍結を検討し始めた。それに代わってというわけではないだろうが、三井物産<8031>は24日、株式会社イワクラ、住友林業株式会社、北海道ガス株式会社との共同出資により、北海道苫小牧市に苫小牧バイオマス発電株式会社を設立し、木質バイオマス発電事業を行うことについて、株主間協定書を締結したと発表した。
この事業は、新会社が苫小牧市晴海町に発電規模約5.8MWの発電設備を建設し、再生可能エネルギー固定価格買取制度を利用し発電事業を行うもの。2015年5月に着工、2016年12月の稼働を予定している。燃料となる木質チップには、北海道における林地の未利用木材を100%利用する計画であり、事業の開始に伴い、新たに年間約6万トンの木材需要が発生する見込み。これにより森林環境の整備が促進され、北海道における林業振興にも大きく貢献するほか、雇用の創出により地域の活性化にも寄与するなど、社会的な意義を幅広く有する事業となるとしている。
三井物産は日本全国に社有林「三井物産の森」を約4万4000ヘクタール保有しており、「社会全体に役立つ公益性の高い資産」として、長い年月をかけ林業を通じた保全活動を続けてきた。そのうちの約8割にあたる約3万5000ヘクタールが北海道内に位置しており、事業開始に伴い「三井物産の森」からも林地の未利用木材を新会社に供給する予定だ。
三井物産は北海道支社を通じ地元に密着し、道内企業や自治体とのさらなるネットワークを構築すると共に、今後も木質バイオマス発電事業の経験を活かし新規エネルギー事業を発掘し、エネルギーの安定供給に貢献していきます。
資源エネルギー庁によると木質バイオマス発電は、CO2を排出しない、廃棄物の再利用や減少につながる、家畜排泄物、稲ワラ、林地残材など、国内の農産漁村に存在するバイオマス資源を利活用できるといったメリットがある。しかし、 資源が広い地域に分散しているため、収集・運搬・管理にコストがかかる小規模分散型の設備になるという課題があり、日本では総発電量の0.5%を占めるに過ぎない。三井物産の広報部では「資源を保有しているのが強み。安定供給やコストの問題は心配ないとして事業化に踏み切った」とコメントしている。(編集担当:慶尾六郎)