2013年、株式市場の展望

2013年01月03日 09:38

 「好況感なき景気回復」と参院選で夏頃は停滞しても、秋からは政策効果がゆきわたり株価は再び上昇する。

 2012年は世界的に「政治の年」だったが、2013年の大きな流れは「政治から経済へ」「世界的な景気回復」になりそうだ。

 アメリカの次の中間選挙は2014年秋なので、再選され2期目に入るオバマ大統領は、「財政の崖」を乗り越えたその先の経済問題に、選挙を気にせず全力で取り組むことができる。中国は共産党大会で党内の権力闘争に決着がついたので、習近平-李克強体制は経済成長率の回復に向けた政策に本腰を入れることができる。日本との関係改善は避けて通れないはずだ。ヨーロッパは債務問題について世論が割れて選挙で争う時期が過ぎ、経済再建に向けて国民の力を結集すべき時期に入る。そして日本は、総選挙で国民の審判を受けて政権に復帰した自民党内閣が、デフレ脱却、名目3%の経済成長を目指す経済・財政政策を始動させる。

 世界全体で経済を直視するようになる2013年に、大きくクローズアップされる国として挙げられるのは中国ではないだろうか。現状、中国の景気はようやく底入れが確認できたところで、景気回復ではアメリカよりも遅れ気味だが、この国の経済はいったん走り出したら速い。2013年中にアッと言う間に世界の成長センターに躍り出る潜在力を秘めている。人口約13億人でGDP世界第2位の巨大な経済の成長ペースが急回復すれば、アメリカを潤し、日本を潤し、ヨーロッパを潤し、世界経済を好転させてくれる。そんなシナリオが描ける国は現状、中国以外には見当たらない。ロシアやブラジルでは不十分。インドはそうなれる素質はあるが、当分先だろう。

 その中国については「春節(旧正月)が明けたら……」という言葉がしきりに語られている。今年の旧暦1月1日は2月10日で、2月9~15日が春節休暇になり、振り替えで出勤日になる16日(土)、17日(日)から中国経済が再始動する。小売業の春節商戦が大いに盛り上がり、その勢いで2月後半、3月の鉱工業生産が大きく伸びて景気が急ピッチで回復するというシナリオだ。その頃には反日感情も和らいで、日本製品の販売や日系企業の業績も回復しているのではないかというのが、自動車メーカーをはじめ多くの日本企業が口にする希望的観測である。

 すでに世界のマネーは香港に集結し、この地域では今、バブルが過熱している。中国経済がテイクオフすれば、そのマネーは大陸に向かってドッと流れ込んでいくはずだ。

 中国が主導して、世界経済の活力がよみがえる。もしその通りになれば、日本では1月から2月にかけて緊急経済対策が講じられ、10兆円規模の補正予算が閣議決定され、日銀の金融政策決定会合で2%のインフレ目標を加えたさらなる金融緩和が決定し、2013年度本予算の中身が次第に固まっていくことで建設、不動産、金融など関連業界の株高が続いたところへ、中国やアメリカの景気動向に敏感な自動車、機械、電機など輸出関連株の株高が加わってくる。買われる根拠は前年末のような為替レートではなく実需の伸びなので、より力強く日経平均を押し上げてくれるだろう。3月末までに1万2000円台いや1万3000円台も望めそうだ。

 その流れを受け、4月から5月にかけてピークを迎える3月期決算発表では、輸出関連を中心に第2、第3四半期の落ち込みを第4四半期でカバーし、当初の見通しに近い数字まで戻す企業が増えそうだが、株式市場により大きなインパクトを与えるのは2014年3月期の業績見通し。新聞に「2ケタ増収見込む」「来期は営業利益過去最高益更新」「最終利益3倍増を予想」といった景気のいい見出しがゾロゾロ並びそうで、個別企業、関連業界の株価は敏感に反応するだろう。

 だが、好決算見通しの裏側には懸念材料も潜む。それは補正予算、本予算の国債増発の副作用とも言える金利の上昇で、すでに長期金利は前年末から上昇の気配を見せている。住宅ローン金利の上昇が住宅建設の「消費税アップ前特需」を相殺しそうだが、より深刻なのが金融機関からの借入金に依存せざるを得ない中堅・中小企業の資金繰りだ。中小企業金融円滑化法の3月末の期限切れに金利高が重なると、資金調達がいっそう厳しくなって倒産の増加も予想される。それにより失業率が上がれば個人消費が冷え込んで景気回復に水を差し、日経平均の下落要因になる。

 さらに、2月のイタリアの総選挙を経て春頃に借り換えが重なるヨーロッパの重債務国の国債発行にからみ何かアクシデントが起きたりすると、ネガティブサプライズで為替が円高に振れ、日経平均が大きく下落して1万円を割り込むなど、「4月は残酷な季節」にならないとも限らない。

 そこまで悪化しなくても、安倍内閣の「公共投資→金融緩和→政府の手を離れて自律回復」という三段ロケット式景気回復プランは、当初の回復ペースに業種ごとのバラつきが出る「まだら模様」になるのはある程度、避けられない。デフレから脱却できたとしても、公共投資や輸出は好調でも中小企業の倒産が増えるとか、設備投資は活発でも原材料費の上昇で利益がなかなか出ないとか、消費者物価が上がっても賃金水準が抑えられたままで個人消費が盛り上がらないといった「跛行性」が指摘されることは十分ありえる。その状況はリーマンショック前の2005~2007年頃、景気拡大が続き企業業績がよく株価も比較的高かったにもかかわらず、所得格差が拡大して「景気はいいらしいが自分は金回りが悪い」と、国民が好況感をあまり感じられなかった時代に似ている。その当時、政権を担当した総理大臣の一人は誰あろう安倍晋三氏で、2007年の参議院選挙で敗北を喫している。

 間の悪いことにこの夏も参議院選挙がある。選挙権を持つ国民の多くが好況感を持てないままだと、「自民党内閣になっても景気は全然回復していない」「生活は苦しいままだ」と不満を抱き、前年末の総選挙で民主党に罰を与えたように、今度は自民党に罰を下すかもしれない。その結果、与党の参議院の議席が過半数に遠く及ばなければ、海外の機関投資家あたりは「安倍内閣の政権基盤は弱体化した」と日本株売りに出て、夏場の日経平均は1万円近辺でウロウロしかねない。ドル円80円、ユーロ円110円あたりまでの円高進行もありえる。

 それでも、秋から年末にかけては、国債増発による金利上昇に目をつぶって景気刺激策を次から次へと繰り出した政策効果が、ようやく広範囲の産業に波及してくる。失業率の低下、残業の増加による可処分所得の増加などがみられて国民が好況感を感じられるようになれば、消費増税前の駆け込み需要ともあいまって個人消費が動き出し、政府が待ち望んだロケットの三段目の自律回復が軌道に乗る。そうなれば秋の消費増税実施の見きわめでも安心してゴーサインを出せるだろう。それに加えて、QE3の出口が論じられNYダウが史上最高値をつけるようなアメリカ経済の本格回復、ドル円90円の声を聞くようなドル高、危機が遠のいてユーロが上昇といった海外からの追い風が吹けば、日経平均は再び上昇局面を迎え、年末の大納会に向けて1万2000円、1万3000円、1万4000円、1万5000円と、水準を切り上げていくだろう。

 夏に参議院選挙があるので、2013年の日本株には「国民の投票態度リスク」があることを忘れてはならない。政治の年が終わっても、国政選挙は経済に大きな影響を及ぼす。それでも世界の景気は回復基調なので、為替はドル円80~90円、ユーロ円110~125円、日経平均9500~1万5000円で、決して悪い年にはならないと思われる。(編集担当:寺尾淳)