リーマン・ショック以後、待機児童数は上昇を続けている 。2012年には都市部を中心に2万4000人 の待機児童がいるが、潜在的には80万人以上ともいわれる 。
背景には、保育士の資格を持っているが保育士として働いていない「潜在保育士」の存在がある。保育士の有資格者は全国で約112万人だが、実際に働く保育士は約33万人にすぎない(ただし認可外保育園などは除く) 。
保育士はいわゆる感情労働に加え、肉体労働である。子どもや親と関わる中で感情を抑えコントロールしなければならないうえに、10キロ近い子どもを抱っこするなど体力も必要だ。そのうえ賃金は安く、手取り月収が13~14万円ということも。著者の友人にも元保育士が何人かいるが、主な離職理由は「職場の人間関係、子どもに対する責任が重いこと、残業の多さ」である。
子どもは好きだが、遊ぶ最中にケガをするかもしれないし、そうなると昨今の「モンスターペアレント」が何と言うか分からない。また教室を飾るオーナメントの作成や親とのやり取りなど、残業も多い。皮肉なことに、自分の子どもの行事と勤務が重なった場合などに、保育士としての勤務を優先させなければならないケースもあるという。
このような労働環境のもと、保育士たちは数年で離職し、アパレル産業や営業など他のサービス業へ転職してしまう。そもそも資格の資格を取っても、半数近くは保育士にならない。
政府は女性の労働力化を進めようとしているが、子どもが保育園に入れなければ、母親は外に出られない。「女性の活用」の足かせは保育士不足といっても、過言ではないだろう。
NPO法人フローレンスの駒崎弘樹氏によると、子育て家族への公的支出が「1」とすると、高齢者は「11」 。このような状態では、保育士の賃金を上げるための財源確保も後回しにされかねない。国が率先して保育士の給料を上げなければ、保育士になりたい若者は増えないだろう。そして企業における女性の活用も進まないだろう。対策は急務である。