高齢化社会を背景に、老人福祉関連サービスは今後も需要の拡大が見込まれている。しかし、2013 年、2014 年は小規模事業者を中心に老人福祉事業者の倒産件数が過去最高水準となった。これからますます高齢化が進むが、これら事業者の休廃業・解散はどのような動きを見せるのだろうか。
帝国データバンクでは、2005年から2014年までの10年間に休廃業・解散となった老人福祉事業者を抽出し、分析した。それによると、2005年~2014年の 10年間に発生した老人福祉事業者の休廃業・解散は428件。2014年は130件となり、2005年以降で最多となり、最近の3年間で3倍に増加した。
老人福祉関連事業を手がける企業や団体は、2000年4月の介護保険法施行をきっかけに増加し、2001年に2万782だった訪問介護・通所介護施設・事業所数は2006年には4万357にまで増加(厚生労働省データ)し、競争は激化した。そうしたなか、2006年4月に改正介護保険法が施行され、介護報酬の引き下げ、介護保険給付対象の除外項目増加など、経営環境が悪化する業者が増加した。
さらに近年は、労働環境・賃金問題などから人手不足に陥る事業者や施設の増加も加わり、休廃業・解散および倒産件数が急増しているとみられるとしている。
また、2005年~2014年に休廃業・解散となった 428件の内訳をみると、「株式会社」が169件(構成比39.5%)で最も多く、以下、「特定非営利活動法人(NPO 法人)」(114件、同26.6%)、「有限会社」(77件、同18.0%)、「合同会社」(31件、同7.2%)と続き、2014年(130件)においても、「株式会社」(52件、構成比40.0%)、「特定非営利活動法人(NPO法人)」(37件、同28.5%)、「有限会社」(21件、同16.2%)、「合同会社」(10件、同7.7%)の順となった。
428件の内訳をみると、「北海道」が45件で最多となった。以下、「東京都」(21件)、「岡山県」(17件)、「埼玉県」(16件)、「福岡県」(15件)と続き、18都道県で 10件を上回った(表参照)ほか、2014年(130件)においても、「北海道」(16件)が最多となった。北海道においては、医療機関が札幌地区に一極集中する一方、他地域では人口減少に伴う病院、医師の不足で身売りや再編が相次いでおり、老人福祉事業者においても同様の現象が起きていると考えられるとしている。
最後に、今回判明した428件の休廃業・解散前の年収入高を調べたところ(未詳の99社除く)、261件が年収入高1億円未満であった。大半が初期投資のかからない在宅介護サービスを行っていた企業(または、行う予定で設立されたものの稼動に至らなかった事業者)で構成されているとみている。
今後、高齢化社会はさらに深刻化し、老人福祉関連サービスの需要は拡大することが予想される一方、利用者側の安心・安全面に重点を置いた大手事業者志向が高まりや新年度の9年ぶりとなる介護報酬引き下げなどを背景に、小規模事業者を中心とした休廃業・解散件数は、今後も高水準で推移すると予想している。(編集担当:慶尾六郎)