地域の問題を解決する「ソーシャルビジネス」への融資、過去最高へ

2014年11月27日 10:42

 地域社会の課題解決を目指す「ソーシャルビジネス」への融資が増えている。日本政策金融公庫が公表した、今年度上半期のソーシャルビジネス関連融資実績は3047件、金額は253億円で、件数・金額ともに半期の実績としては過去最高となった。ソーシャルビジネスとは、住民やNPO、企業などが、環境保護や高齢化、子育て支援、まちづくりなどについて、ビジネスの手法で取り組むもの。他業種と比べて女性経営者の割合が高く、雇用の受け皿にもなるとして注目を集めている。

 日本政策金融公庫の国民生活事業によると、ソーシャルビジネス関連融資実績のうち、NPO 法人(特定非営利活動法人)向けは447件(前年同期比126.3%)、金額は37億円(同138.8%)、介護・福祉事業向けは2701件(同113.1%)で、金額は226億円(同103.7%)となった。多様化する地域社会の課題解決に取り組む NPO 法人が増加していることや、昨年度の補正予算成立以降、創業者向け融資制度が拡充されたことなども影響している。

 ソーシャルビジネスの現場では、女性が多く活躍している。女性経営者の割合は、国民生活事業全体の12.4%に対し、ソーシャルビジネスでは33.8%と3倍弱にのぼる。また、創業前もしくは創業後1年以内の企業に対する融資も33.9%と、全体(12.8%)と比べて大幅に高い。新たに事業を始める女性への融資も目立つようだ。

 日本政策金融公庫が公開している事例には、13年9月創業の「特定非営利活動法人どりぃむスイッチ」(代表:中村友紀氏)など2団体が取り上げられている。「どりぃむスイッチ」では、ひきこもりや不登校等の若者の自立や社会参加支援を手がける。「仕事をしたい」「学校へ戻りたい」といった悩みを持つ子どもや若者に対し、相談・カウンセリングを受け付けるほか、就労を目指す若者のITスキルアップ支援、企業から受注したホームページ制作やデータ入力なども行う。同じ悩みを持つ家族同士の交流会を開催するなど、家族らに子どもへの理解を深める機会も提供する。こうしたソーシャルビジネスの取り組みが、身近な地域の課題を解決し、さらには雇用の受け皿となる可能性は大きい。(編集担当:北条かや)