日銀の黒田総裁は、2015年度も引き続き金融緩和政策を続行すると発表した。「物価の基調は着実に改善している」と述べ、13年4月より「次元の違う金融緩和」と称し大規模な資金供給を行ってきた成果を強調した。
日銀の黒田総裁は、2015年度も引き続き金融緩和政策を続行すると発表した。「物価の基調は着実に改善している」と述べ、13年4月より「次元の違う金融緩和」と称し大規模な資金供給を行ってきた成果を強調した。しかし実際には、昨年夏以来の原油安で物価は低迷、異次元緩和導入時の「物価上昇率2パーセントを2年程度で達成する」との宣言は実現しそうにない。各銀行の多額の国債を買い取ったにもかかわらず、銀行からの企業や個人への貸出残高は緩和前から横ばい状態。円安による好況で一部賃金も上がったものの、それを上回る物価高に消費者はむしろ財布のひもを締めている。アベノミクスと足並みを揃える日銀の金融緩和政策は、本当に正しいのだろうか?
経済学の基本理論では、日銀が市場への資金供給量を増やせば物価は上がるはずだ。銀行からの融資が増え、企業も生産活動への投資をしやすくなる。業績が伸びれば賃上げもされ、個々人の消費活動も活発になるだろう。しかし現実には、必ずしもそうなっていない。少子高齢化が進み中小零細企業では人手不足に悩んでいる。人口減で、需要の増加も期待できない。そんな世情では、金利を下げてもそんなに融資は増加しない。
円安で自動車や電化製品など輸出の多い企業は収益を上げたが、その他の業種では材料の輸入でコストがかさみ、赤字にあえいでいるところも多い。原油や食品などの輸入品目は露骨に値上がりし、家計を直接苦しめている。厚労省の調査でも、14年の勤労者1人当たりの給与総額は前年より少し増えたものの、物価を考慮した実質賃金は2.5パーセント減少したとの結果が出ている。
国内景気は、貿易収支により海外の経済事情にも左右される。国家主導の金融政策はそもそも各国で行われており、日本も同様に実施したところで即効は期待できない。それよりも日本経済の構造的な問題点を改めていくのが先決ではなかろうか。例えば日本企業は、業績が悪化すると真っ先にリストラを考える。だがそんな消極的な解決法に頼らず、より競争力のある商品の開発に一層力を注ぐといった、前向きな成長戦略を志向する土壌を企業各々で社内に育てていくべきである。消費者個人も、不況の責任を国政だけに押し付けて云々するような依存的な経済体質を抜け出すべく、自立意識を養わねばならない。そんな転換点に、私たち日本の国民も今まさに差しかかっているとは感じられないだろうか。(編集担当:久保田雄城)