Wi-SUNの普及は実現するか?HEMS市場に一石を投じる新製品が登場

2015年03月28日 19:08

ロームLSI

スマートハウスの中核技術としてHEMSの普及が進む中、注目が高まる国際無線通信規格Wi-SUN。ラピスセミコンダクタはWi-SUNに最適なCPU内蔵の1チップ無線通信LSIの開発に業界で初めて成功した。

 2015年1月30日に独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が宅内無線ネットワーク用Wi-SUN認証規格に準拠した無線機の実装に世界初の成功を収めたと発表したことで、HEMS(Home Energy Management System)の普及がさらに加速しそうだ。

 環境問題への意識が高まる中、スマートハウスの中核技術として注目される情報技術「HEMS」は、大きく分けるとHEMSコントローラ、スマートメーター、家電等により構成される。そして、これらを制御するための各機器間の上位層通信プロトコルとして、日本ではECHONET Lite(エコーネットライト)が2011年に策定された。対応している製品であれば、メーカー問わず使用できるようになったため、これを境に日本国内でもHEMSの認知と導入が拡大していった。

 一方、Wi-SUNはECHONET Liteをサポートする下位層通信プロトコルとして、Wi-SUNアライアンスによってIEEE 802.15.4g国際標準規格準拠の920MHz帯無線を用いるプロファイルが策定されており、HEMSコントローラとスマートメーター間の区間、いわゆる「Bルート」について、すでに複数の電力会社による採用が進んでいる。また「HAN」(Home Area Network)の中心的役割を担うHEMSコントローラと各家電間の区間についてのWi-SUNプロファイルも、15年1月29日に策定されている。HANで用いられるWi-SUNプロファイルは、Bルートのような1体1通信ではなく、単一のHEMSコントローラに対して2台以上の家電が接続する1対多通信が可能となっている。

 このように続々とWi-SUN導入の環境が整いつつあるものの、普及には一つの課題が残されていた。それは、Wi-SUN方式はその仕様上、システムに要求するメモリ容量が大きく、Wi-SUNに適したCPU内蔵の1チップ無線通信LSIが存在しなかったという点だ。

 そんな中、ロームグループ<6963>のラピスセミコンダクタが3月24日、ついにWi-SUNに最適なCPU内蔵の1チップ無線通信LSI「ML7416」の開発を発表した。本LSIは無線通信部とWi-SUNに最適な制御用CPUを内蔵した、業界初、つまり世界初の1チップ無線通信LSIだ。無線通信部には同社の無線通信LSI「ML7396B」を使用し、CPU部は業界標準32bitCPUコアである「ARMRCortexRM0+」を搭載。また、512KB Flash・64KBRAMといった大容量メモリを搭載したことで、ML7416はWi-SUN対応無線機器で必要になる機能を1チップで実現することが可能だ。また、従来比で約35%の実装面積を削減し省スペース化に貢献するほか、システム簡略化、設計負荷軽減にも大きく寄与する。

 ちなみに、日本企業では他にも村田製作所<6981>などがWi-SUNモジュールの開発を行っており、Bルートに向けたWi-SUN認証920MHz帯無線通信モジュールを商品化し3月から販売を開始している。

 来年4月の電力小売りの全面自由化を控え、エネルギー産業がにわかに慌ただしくなる中、HEMS関連でも多種多様なサービスの創出が予想されている。ラピスセミコンダクタの1チップ無線通信LSI「ML7416」の登場によって、Wi-SUNが今後、それらの局面を左右しかねない重要なキーワードとなりそうだ。(編集担当:藤原伊織)