外食チェーン、低価格競争は卒業し新業態に本腰

2015年03月30日 12:15

 外食チェーンの不況は長らく言われていることではあるが、人口減少に伴う消費低迷など構造的な要因により、なかなか低迷脱却の道筋を見出せない。しかしそんな中、食関連の大手が従来の方針を大胆に転換し、新たな業態の人気店を目指すケースが増えている。

 セブン&アイ・フードシステムズ<3382>は、ファミリーレストラン「デニーズ」を運営しているが、昨年年末より新たに丼の専門店「満天丼」をオープンしている。米粉入りの天ぷら粉でより一層の“サクサク感”を追求。また、コレステロールを含まないキャノーラ油を独自開発し、からっとした油っこくない天ぷらを提供しているという。また、和風にこだわりながらもメニューはバリエーションに富み、「海老天丼」「野菜天丼」など定番を始め「春のめぐみ丼」など独自の目玉商品も合わせ、天丼だけでも7種類の味が楽しめる。みそ汁・ごはん付きの定食も用意、リピーターとなる来店者も多いことだろう。また、居酒屋チェーン「つぼ八」は、肉メニュー中心店舗のチェーン化を目指すという。食肉輸入を手掛ける日鉄住金物産<9810>の出資もあり、すでに幾つかの肉関連の店舗も複数出している。焼き肉店「伊藤課長」、居酒屋「牛たんささ川」などだ。独自の調達経路を生かして、さらにグループ化を進め、いずれは全国的に展開していく予定のようだ。

 目新しい海外の地域料理に特化した新店舗のオープンも少なくないが、今特に注目したいのは、同じく昨年年末に開業した新宿のスパニッシュ専門店「Rico」である。これは、「とんかつ新宿さぼてん」等で知られるグリーンハウスフーズが経営し、イベリコ豚を使用した伝統的なスペイン料理や創作料理を手掛ける。オードブルには非常に高価な生ハム“ハモン・イベリコ”が提供されたり、土日限定だがビュッフェ形式で豊富なタパス(小皿料理)が味わえるなど、他店にはないラインナップでお客を満足させてくれそうだ。

 特に1990年代後半の生産年齢人口の減少と軌を一にして、外食分野も減収傾向が顕著となった。そんな中で、例えば牛丼専門店が激安合戦を繰り広げたり、ファストフードチェーンが趣向を凝らしたアレンジ商品を売り出したりと、食関連メーカーは売上回復に向けてあらゆる戦術を仕掛けてきた。しかし低価格競争は底を打ち、既存の路線で追い求める付加価値も飽和の兆しが見えている。ここに来て、業態そのものを一新する思い切った経営戦略は、低調気味の外食産業に明るい未来をもたらすのか、見守りたい。(編集担当:久保田雄城)