全世界で年間約2.3億トン、国内では約1300万トンも生産されているプラスチック。ほとんどのプラスチックは石油由来であるため、生産過程で発生する温暖化ガスの量や製造に要するエネルギーは膨大である。また、石油由来製品を代替すると期待の高まっている植物由来資源は、数千万トンレベルの需要に対して陸上植物の利活用だけでは供給が賄えないリスクがあり、さらにその素材は食糧と競合しない非食用であることが望まれている。
こうした中、産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門が、NEC<6701>スマートエネルギー研究所および宮崎大学と共同で、微細藻の一種であるミドリムシから抽出される成分を主原料とした微細藻バイオプラスチックを開発したと発表した。
この微細藻バイオプラスチックは、ミドリムシ(ユーグレナ)が作り出す多糖類(パラミロン)に、同じくミドリムシ由来の油脂成分から得られる長鎖脂肪酸またはカシューナッツ殻由来の油脂成分であるカルダノールを付加して合成されており、植物成分率が約70%と高いことが特徴となっている。さらに、非食用植物資源由来の多糖類を利用しているだけでなく、一般に水中で光合成する微細藻類は、陸上植物よりも太陽エネルギー利用効率が高く、特にミドリムシは高濃度の二酸化炭素を直接利用でき、高い光利用効率の実現が可能だという。
矢野経済研究所の調査によると2010年のバイオプラスチック市場規模は、汎用プラスチックであるPETを植物由来原料に切り替えたバイオPETが大手飲料メーカー数社に採用されたことなどにより、前年比93.5%増と急増した。一方、2011年の市場規模は前年の反動が大きく、また震災を機に高まったコスト削減志向が影響もあってか、前年比18.0%減のマイナス成長となった。しかしこの減少は一時的なものと見られており、2012年は前年比26.3%増と拡大が見込まれ、今度も拡大が予測される。今回開発された微細藻バイオプラスチックは、さらに高い耐熱性や強度などの優れた実用特性を目指すと言うから実用化にはまだ時間がかかりそうであるが、こうした技術を一日も早く実用化にこぎつけることができれば、半導体や製造業に代わる日本を代表する産業となるのではないだろうか。(編集担当:井畑学)