Jリーグ発足20周年、課題を克服するには「原点回帰」

2013年01月10日 10:25

 サンフレッチェ広島の初優勝で幕を下ろした2012年のJリーグ。開幕戦こそ30,000人近くの観客を動員したものの、前半は10,000人台前半で推移していた広島ビッグアーチの入場者数が、ホームゲームのラスト6戦のうち4試合で20,000人を超え、優勝を決めた第33節のC大阪戦には30,000人を超える観客を集めたことは、2009~2011年の3年間で1試合平均の入場者数が15,723人、14,562人、13,203人だったチーム事情を考えると(2012年の1試合平均入場者は17,721人)、チームの成績と入場者数が比例する傾向にあることを示す一定の指針になるといえる。

 Jリーグで最も大きな集客数を誇るクラブといえば、言わずと知れた浦和レッズだ。ここ5年間で最も入場者数の多かった2008年の1試合平均47,609人という数字などは、欧州で最も多くの入場者を集めるドイツ・ブンデスリーガの各クラブと比べても引けをとらない数字で、ホームゲームの開催のたびにスタジアムがチームカラーの赤に染まる様は圧巻のひと言である。

 浦和は、近年では柏木陽介や梅崎司、槙野智章をはじめ、Jリーグに所属する他チームからの移籍や海外からの復帰選手を補強するなど、有力選手を獲得することでチームを強化していくことでも知られている。この年末年始にも鹿島アントラーズから興梠慎三、初優勝したばかりの広島から森脇良太、ベガルタ仙台から関口訓充、柏レイソルから那須大亮を獲得しているが、これは自チームよりも資金力の弱い同リーグ他チームからの“引き抜き”が当然のように行われている欧州各リーグとは異なり、国内移籍が極端に少ないJリーグの中では異質なものと映る。これが“Jリーグのジャイアンツ”と揶揄される理由だ。

 しかし、浦和が地域に根づくサッカー熱によるサポーター収入でこういった有力選手の保有を実現していることは特筆すべきことだろう。浦和の売上比率を見ると、入場料とグッズ売上げによる収入が54%と半分以上を占めており(J1平均は約31%)、さらに、選手への報酬や人件費と入場料収入との比率が96%と、ほぼ同数になっていることが興味深い(J1平均は約200%)。

 一方、Jリーグ全体を見ると、11月に行われた昇格プレーオフを勝ち抜き、来期J1に昇格することが決まった大分トリニータが、今季の財政危機こそ乗り切ったものの今後も厳しい財政が強いられるなど、財政難に陥るクラブが後を絶たない。Jリーグは、14年度決算までに債務超過の解消を求めるクラブライセンス制度の導入を決めているが、それによってJ2を含むJリーグに昇格・維持できないクラブも今後出てきそうだ。

 発足から20年が経過した今、週末のスポーツニュースや新聞といった媒体を見ていても分かるとおり、プロ野球やサッカー日本代表に比べて注目度が高くはないJリーグにとって、今後、各チームに大スポンサーが付き、チーム経営が一気に好転することは考えにくい。そんな時、やはり各チームの自力となるのは発足当初の理念である“地域密着”に原点回帰すると思われる。J1の今季の平均入場者数は17,566人と昨季より1,769人増加しており、さらに、まだ多くの入場者を集めるキャパシティはスタジアムに残っている。(編集担当:上地智)