トヨタは2016年を目途にブラジルで、同社のハイブリッド車(HV)代表車種「プリウス」の現地生産をスタートさせる方針だという。プリウスの海外生産は中国、タイに次いで3カ国目となる。現在、ブラジルの景気は五輪開催を前にしながら低迷で自動車販売は低調だ。しかしながら、中長期的には環境にインパクトを与えないHVなどローエミッション車の需要は伸びると判断した。ブラジルでの現地生産で、新興国におけるHVの普及に弾みをつける。
トヨタのブラジル法人は現在、連邦政府や州政府とプリウスの現地生産の開始に伴う優遇措置について交渉を進めている。トヨタによると両政府との調整が済み次第、具体的な生産計画を策定するという。ブラジル・サンパウロ州のアルキミン知事も3月23日、「プリウス生産のための支援を検討している」と述べた。
現時点の構想では、カローラなどを生産しているサンパウロ近郊のサンベルナルド工場で年1500台程度の規模で生産を始める計画。ピックアップトラック「ハイラックス」向け部品の生産をアルゼンチンに移管した後のスペースを利用する。当初は、輸入した部品を現地で組み立て完成車とする「ノックダウン方式」となる見込み。その後、販売状況を見極めながら部品の現地調達を増やす考えだ。
ブラジルは中国、アメリカ、日本に次ぐトヨタにとって世界で4番目の自動車市場で、トヨタは2013年1月にブラジルでプリウスの販売を始めた。現在は日本から輸出しており、価格は11万5千レアル(約500万円)程度と、日本の価格の約2倍程度となっている。輸入車への高い税金がネックとなり、販売実績は累計400台ほどにとどまっている。現地生産で価格を抑え、普及を後押しする。ただ最近になってブラジル政府は、エコカーの普及に向けてHVを現地生産した場合の税金を引き下げる考えを示した。実現すれば、販売価格が下げられ販売増が見込める。そのため、トヨタは現地生産に踏み切ることにしたというわけだ。
プリウスは1997年の発売以来、トヨタを代表するHVの看板モデルとして北米や中国、欧州などで販売を伸ばしてきた。2014年には世界で42万8000台プリウスを販売した。生産は堤工場(愛知県豊田市)など国内が中心だが、海外で環境対応車の需要が高まるのに伴い、2005年12月に中国・長春工場での現地生産をスタートさせている。2014年には中国でHVの基幹部品を開発する拠点も稼働した。2010年11月にはタイのゲートウェイ工場でも生産を開始している。
トヨタは2014年に世界で126万6000台のHVを販売した。世界的な環境規制の強化などを受け、うち海外向けが46%と高まる傾向にある。ただ、HVの販売先は日米欧の先進国が大半を占め、新興国での普及が課題となっていた。(編集担当:吉田恒)