トヨタ、2015年の新年度に向けて「もっといいクルマづくり」の状況を発表

2015年03月28日 14:22

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TNGAによる開発で新型ハイブリッドシステムを搭載してフルモデルチェンジを予定するプリウス。燃費は15%以上向上を見込んでいる

 トヨタ自動車は、2011年3月に「トヨタグローバルビジョン」を策定し、その指針に基づき「持続的に成長し続ける企業」を目指し、「もっといいクルマづくり」に向けた取り組みを進めている。

 当時、同社の豊田章男社長は、「経営を取り巻く環境が激変するなか、もはや、これまでと同じ考え方や仕事の仕方では、持続的な成長は望めない。トヨタ自らが新しいビジネスモデルを構築することが必要な時代に入った」と語っていた。

 トヨタにおける取り組みの中核は「Toyota New Global Architecture」(TNGA)に基づく商品開発と競争力のある工場づくり、それを支える「人材育成の強化」である。

 豊田章男社長によれば、「2015年にTNGAを導入した新型車の発売など、これまでの『意志ある踊り場』あるなかで、持続的成長に向けて、着実かつ大胆に歩みを進める年にしたい。新年度は人材育成を含めた真の競争力を向上していくことが重要であり、持続的に成長する企業を目指したい」としている。

 トヨタが持続的成長を続けるために、TNGA思想に基づいてパワートレーンユニットとプラットフォーム一体的に新開発・刷新することで、クルマの基本性能や商品力を向上させる。そのため、グルーピング開発による部品やユニットの共用化を進め、従来比20%以上の開発リソーセスを削減する見込みだ。また、仕入先と協力して原価低減も推進して、得られた資金を先行技術開発や商品力強化に再投資するという。

 現在、生産分野において「意志ある踊り場」として、あえて新工場の新設を凍結し、既存工場の能力を最大限有効活用する。また、モデルチェンジ時の設備投資額の低減を図り、競争力のある「もっといい工場づくり」に徹底して取り組んでいる。

 今年市場投入する新開発プラットフォームは、アンダーボディやサスペンションを刷新・新開発するとともに、パワートレーンユニットを低重心・低配置化することで、クラストップレベルの低重心高を実現。低く構えたデザイン、気持ち良いハンドリング、質感の高い乗り心地、衝突安全性能などに貢献する。ボディモノコックの骨格構造の見直しやボディ接合にレーザー溶接技術の採用などで、ボディ剛性を従来比30~65%向上させる。この新プラットフォームは、FF系ミディアムモデルから導入、FF系のコンパクト車、ラージ車、FR系の車種にも順次展開し2020年にはグローバル販売の約半数に導入する見込みだ。

 クルマの中核となるパワートレーンユニットは、低重心化、軽量コンパクト化、統一設計によるモジュール化など、クルマの基本骨格要素であるプラットフォームとパワートレーンユニット間で連携しながら新開発し、高性能・低燃費を追求する。エンジンの熱効率やトランスミッションの伝達効率向上で、パワートレーンシステム全体(エンジン・トランスミッション)で燃費は約25%、動力性能は約15%以上向上させる。

 またハイブリッドシステム(エンジン、モーター含むシステム全体)では、駆動ユニットの配置見直しやモーター、インバーター、電池の小型化、高効率化を図ることで燃費の15%以上向上を見込んでいる。トヨタは新パワートレーンユニットを2015年に導入開始し、新型プリウスに搭載すると見られる。以後、同社HVのハイブリッドシステム、トランスミッション、エンジンをモデルチェンジごとに順次刷新する。

 2013年以降、トヨタは工場ラインの汎用性を高め、複数工場で同一車種を生産するリンク生産を進めてきた。機械の故障や保全作業で生産を休止させる時間を極力無くすことによって、各工場の余剰能力を徹底的な使い切る施策で、工場稼働率がグローバルで2009年の約70%から90%を超えるまでに向上している。

 これらによって工場の初期投資は、2008年比で約40%低減できる目処がついたという。その投資低減を原資に、エネルギーマネジメントを含め、環境にやさしい工場づくりを進めることで、CO2排出量も2008年比55%程度削減できる見込み。

 このような施策・取り組みを重ねることで、従来の「量を求める」工場から「競争力のある」工場づくりを目指すとしている。(編集担当:吉田恒)