【百貨店、専門店業界の2015年2月期決算】地域、業態、企業によって強気と弱気が交錯

2015年04月13日 20:49

 「インバウンド消費」の影響も大きい

 小売業の百貨店、専門店業界の主要各社の2015年2月期本決算がほぼ出揃った。

 百貨店は、高島屋<8233>が営業収益0.9%増、営業利益10.0%増、当期純利益20.7%増の2ケタ増収で、セブン&アイHD<3382>傘下の西武・そごうは営業収益0.4%増、営業利益7.1%増だった。決算期が2月期ではなく3月期なので通期見通しだが、三越伊勢丹HD<3099>は売上高は2.6%減(速報ベース)ながら営業利益は1.0%増、当期純利益5.5%減の見込み、阪急百貨店と阪神百貨店のH2Oリテイリング<8242>は売上高45.6%増、営業利益21.3%増、当期純利益は前期から黒字化して110億円の見込みである。

 東京、大阪の中心部に店舗を持つところは訪日外国人観光客の「インバウンド消費」の恩恵にあずかり消費増税後の反動減をカバーできているが、ほとんどが非上場の地方百貨店はインバウンド消費の恩恵にあずかれず売上減、営業減益になったところが多い。「地方創生」政策で業績を立て直せるか?

 専門店チェーンは業態、企業ごとに明暗が分かれた。「第2のファーストリテイリング<9983>」とも言われる「無印良品」の良品計画<7453>は、営業収益は18.0%増、営業利益は14.0%増と好調だったが、ヨーロッパが不振で当期純利益は2.8%減。カジュアル衣料のしまむら<8227>は売上高2.0%増だが営業利益12.0%減、当期純利益12.4%減で、創業初の連続減益を喫した。原因は値下げで採算が悪化したため。それと対照的に靴のABCマート<2670>は訪日外国人観光客の「インバウンド消費」も取り込んで、売上高13.6%増、営業利益16.2%増、当期純利益21.9%増と絶好調だった。

 家具のニトリHD<9843>は売上高7.7%増、営業利益5.1%増で28期連続営業最高益になり、当期純利益は7.9%増。中価格帯を重視する商品戦略が当たり、客単価が上がったおかげだという。しかしホームセンターのDCMHD<3050>は営業収益0.8%減、営業利益0.4%減、当期純利益11.8%減と不振。外食の吉野家HD<9861>は新メニュー「牛すき鍋膳」がヒットし、売上高3.8%増、営業利益61.3%増、当期純利益34.8%増と、値上げ効果も出て大幅増益を果たしている。

 不振だった専門店もV字回復の強気見通し

 百貨店、専門店業界の2016年2月期の通期見通しは、概して言えば前期よりも業績が良くなる見通しを示している。

 百貨店は、高島屋は営業収益1.4%増、営業利益6.2%増、当期純利益3.2%増を見込み、連続増収増益を目指す。西武・そごうも連続増収増益の営業収益2.9%増、営業利益7.7%増を見込んでいる。

 専門店チェーンは、良品計画は営業収益11.5%増、営業利益25.8%増の連続2ケタ増収増益、4期連続最高益の見通し。前期は減益だった当期純利益も13.1%増の2ケタ増益を見込む。しまむらは売上高は6.3%増で増収幅を拡大し、前期は2ケタ減益だった営業利益は24.9%増で、同じく前期2ケタ減益だった当期純利益も26.9%増と、利益V字回復で3期ぶりに最高益を更新という強気の通期見通しを示している。前期が2ケタ増収増益で好調だったABCマートは、売上高7.5%増、営業利益2.8%増、当期純利益5.9%増と当初見通しは控えめ。実績を見て上方修正されるか? 

 ニトリHDは売上高6.6%増、営業利益7.1%増、当期純利益5.2%増で最高益更新。前期の好調さをそのまま維持するような見通しを示している。前期は減収減益、最終利益は2ケタ減益と悪かったDCMHDは、傘下の3社の店名に「DCM」をつけ、同業のサンワドーを7月に完全子会社化するなど動き、営業収益は1.9%増、営業利益は8.3%増、当期純利益は13.2%増のV字回復を見込んでいる。吉野家HD は売上高は2.8%増だが、原材料価格の上昇を懸念して営業利益は14.7%減、当期純利益は15.0%減の見通し。ヒット商品が出た前期の大幅増益の反動も出るとみられる。(編集担当:寺尾淳)