宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、月面着陸を目指す日本初の小型無人探査機を2018年度にも打ち上げる。4月20日に開かれた国の宇宙政策委員会で明らかにされた。月面着陸に成功すれば、旧ソ連、米国、中国に続く4カ国目となる。
いまJAXAが目指しているのは、これまでの「降りやすいところに降りる」着陸から、「降りたいところに降りる」着陸への転換だ。過去の月面着陸では、探査機の着陸が目標地点から数キロメートル程度ずれていたが、JAXAは目標地点との誤差を100メートル程度にとどめることを目標にしている。
このピンポイント着陸技術を研究し、それを月面で実証しようという構想が「SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)」だ。
近年、世界の科学コミュニティでは、着陸探査対象として火星、水星、木星衛星群(エウロパなど)といった数多くの天体が提示されている。将来、これらの天体の研究が進むにつれて、ピンポイント着陸への要求が高まると考えられる。
JAXAは、デジタルカメラの画像認識技術を応用して地形を識別し、障害物を避けて、正確に「降りたい所に降りる」ことを可能にしようとしている。日本は07年に月を周回する探査衛星「かぐや」を打ち上げ、クレーターなど月面の様子の撮影に成功している。かぐやのデータも、ピンポイント着陸に活用する。一方、着陸のピンポイント化とともに、低リソース化が要求されており、JAXAでは低リソースでの着陸技術の研究も推進している。
JAXAはSLIM構想推進のために、愛知工科大学、九州大学、首都大学東京などの大学研究室と連繋し、様々な頭脳と技術を結集しようとしている。「システム」、「画像航法系」、「誘導制御系」など6つの分科会に分かれて、専門分野の検討を推進している。
JAXAはSLIMによる小型探査機を国産の新型ロケット「イプシロン」に搭載して打ち上げる計画。宇宙政策委員会が夏ごろまでには、計画を正式決定し、文科省が来年度予算の概算要求に盛り込むことになる。
政府は1月にまとめた宇宙基本計画で、今後10年で無人の小型探査機を計5機打ち上げることを決定している。
オールジャパンで英知を結集することによって、日本が世界に誇る月面着陸に成功する日が訪れることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)