現在、温室効果ガスがなにかと取りざたされている。これを受け、環境省・国立環境研究所・宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で観測衛星を開発、2009年には世界初の温室効果ガス観測専用の衛星「いぶき」(GOSAT)を打ち上げた。今回、それに続く2号機の開発が着手された。
三菱電機<6503>は9日、JAXAから契約者に選定されていた温室効果ガス観測技術衛星2号(「GOSAT-2」)の本格的な開発・製造に着手したと発表した。打ち上げは、2017年度を予定している。
「GOSAT-2」は、世界の温室効果ガス計測の基準となる実用測定精度の確立を目指し、観測センサーの高性能化を実現(CO2測定精度を前号機「いぶき」の4ppmから0.5ppmに向上)した。有効データが取得できない雲を避け、自律して雲の無い領域を指向・観測するインテリジェントポインティング機能を新たに搭載した。
また、温室効果ガス観測センサーに新たな観測波長域を追加したことにより、「いぶき」の観測対象(二酸化炭素・メタン・酸素・水蒸気)に加えて、一酸化炭素を観測できる。また、雲・エアロソルセンサーへの観測波長域追加により、微小粒子状物質(ブラックカーボン、PM2.5等)を推計する。
衛星システム・観測センサーの開発・製造のほかに、衛星データの処理等を含めた地上設備の構築、打ち上げ後の衛星の管制運用もトータルで担当する。
軌道は太陽同期準回帰軌道で、衛星重量は1.7 t(打ち上げ時)。設計寿命は5年である。「GOSAT-2」および前号機である「いぶき」(GOSAT)は、1997年の第3回気候変動枠組条約締約会議(COP3)以降の先進国などでの温室効果ガス削減の取り組みに対する貢献を目指して、環境省・国立環境研究所・JAXAが共同で開発している。
「いぶき」からの観測データはインターネットで世界中へ公開されており、衛星による高頻度でグローバルな観測データの有用性は世界で認識されているという。今回の「GOSAT-2」は、高性能な観測センサーの搭載とインテリジェントポインティング機能との組み合わせなどにより、高精度な観測の実現を目指す。また、13年のCOP19にて日本政府が発表した「攻めの地球温暖化外交戦略」において、日本が誇る低炭素技術の世界へのアプリケーションの一つとして取り上げられていることから、三菱電機はこれへの貢献に向けて注力していく方針だ。(編集担当:慶尾六郎)