世代を超えて連鎖する「心の貧困」

2013年01月15日 07:32

子育て世帯の生活苦が話題になることは多いが、特に離婚などで母子家庭、父子家庭となった場合の状況は深刻だ。厚生労働省によると、ひとり親世帯の貧困率は50.8%と高く、母子世帯の14.4%、父子世帯の8%が生活保護を受給している(「平成23年度全国母子世帯等調査の結果」)。

子育ての金銭的、精神的な苦労を一人で抱え込んでしまうことの多いひとり親にとって、メンタルヘルスの問題もまた、深刻なものとなっている。

ひとり親世帯の保護者は、ふたり親世帯と比べて抑うつ傾向にある割合が高い。うつ傾向とみられる親の割合は、2人親世帯の母親が7%であるのに対し、無業の母子世帯は34%、有業の母子世帯は19%、父子世帯は12.7%に上る。

また無業の母子世帯の4割は健康状態がよくないと答えており、3人に1人は通院する必要のある持病を抱えている。特に無業の母子世帯の母親は健康状態が悪く、彼女たちが身体的、経済的に困窮する中で心を病んでいく様子が浮かび上がる。「わが子を虐待しているのではないか、と思い悩んだことがある」と回答した割合は、無業の母子世帯が18.8%でもっとも高かった。

所得の大小とメンタルヘルスには、明らかな関連がある。近年では、メンタルヘルスが貧困の連鎖を生むことも明らかになっている。

不安定であったり、経済状態の悪い家庭で生まれ育った人は抑うつ傾向になりがちで、低所得になりやすい(内閣府「親と子の生活意識に関する調査」平成24年 )。そうした親の子どももまた抑うつ傾向になりやすく、うつ傾向の子どもほど学業達成に問題を抱え将来の所得も低くなる、という負の連鎖が生まれているのだ。

このように、親の世代から受け継がれるいわば「心の貧困」は、個人の努力で何とかなる問題ではない。メンタルヘルスの問題は目に見えにくく「本人の性格の問題」とされがちだが、根本にあるのは「貧困」ではないだろうか。若者に増えているという「新型うつ」などが話題を集めているが、心の健康と「貧困」との関わりは強調しても足りない。負の連鎖を生まないよう、対策が求められている。