【日経平均】甘利大臣の「口は禍いのもと」で大台遠のく

2013年01月15日 19:10

  大雪が降った14日、東京市場は成人の日で休場だったがNY市場は開いていてNYダウは4連騰で18ドル高。キング牧師の誕生日は15日だが祝日休場は21日になる。日本の投資家にも夢はあるか。三連休の間に為替レートはドル円が89円前後から89円台半ばへ、ユーロ円が118円前後から119円台後半へ円安が進んだため、15日の東京市場は日経平均は113.08円高の10914.65円と10900円台に乗せて始まった。連休中に与党税制協議会が2015年1月からの所得税、相続税の最高税率アップに合意し富裕層増税が株価の足を引っ張るかと思われたが、影響はなかったのか、それとも円安にマスクされたのか。

  前場の日経平均は一時10952.31円まで上昇し、為替はドル円90円、ユーロ円120円の大台に乗せかけたが、前引け後に甘利明経済財政・再生担当大臣が「過度な円安は国民生活にマイナス」と発言して、ドルもユーロも1円近くも円高方向に戻ったため、後場は10900円を割り込んで始まった。その後もなかなか浮上できず終値は77.51円高の10879.08円で、4日連騰で2011年の震災前高値10857円を上回ったものの、大台目前での引き返し感が残った。甘利発言を失言と言ったら失礼だが、前場で過熱感が出ていたデリケートな局面でタイミングが悪かった。市場関係者なら「余計なことを言う」と舌打ちしそうで、まさに「口は禍いのもと」だった。

  東証33業種の値上がり業種は上から海運、鉱業、医薬品、機械、非鉄金属の順で、値下がり業種は下からゴム製品、ガラス・土石、その他製品、石油・石炭製品、空運。この5業種だけがこの日、マイナスになった。

  自動車では2012年の世界自動車販売でGMを抜いて2年ぶりの首位返り咲きが確実と報じられたトヨタ<7203>が5円高。電機ではソニー<6758>が一時1000円台を回復したが、アップル株が下落して500ドルを割った影響が出てシャープ<6753>が9円安。アップル関連銘柄といわれる中では村田製作所<6981> は上げたが、TDK<6762>、フォスター電機<6794>は下落した。精密では、新聞で2014年3月期に増収の公算大と報じられても、ニコン<7731>が前場で昨年来高値を更新してもすぐ下落、リコー<7752>は上昇と好対照だった。一部の証券会社が投資判断を引き下げたファナック<6954>は530円の大幅安で日経平均の足を引っ張ったが、オリンパス<7733>は138円の大幅高で、スキャンダル発生前の水準2000円台にあと一歩まで戻ってきた。

  電力株は日本最大級の機関投資家の日本生命が売却に動くと報じられ下落が懸念されたが、東京電力<9501>は2円安、中部電力<9502>は20円高、関西電力<9503>は変わらずとまちまち。通信では午後2時に12月の携帯電話・PHSの国内販売台数が発表され、年間を通じて純増首位を維持してトップのソフトバンク<9984>は、イー・アクセス株の大量売却を決めたニュースもプラスに作用し15円高。11月の純減を12月は純増に盛り返したドコモ<9437>は株価も1.09%上昇の1400円高。KDDI<9433>も30円高だった。

  今日の主役は「低位株」。長谷工は外資系証券が目標株価を引き上げて売買高1位。13円高、終値100円で2ケタを脱出した。売買高ランキングでは2位に終値169円のみずほ<8411>、6位に終値110円の三井住友建設<1821>、10位に終値108円の日本板硝子<5202>が入り、3位のマツダ<7261>も昨年はずっと100円台か2ケタだった。値上がり率ランキングは1位に決算発表を好感して株価が28.1%も上昇し終値155円のレナウン<3606>、2位に終値39円の日本コロムビア<6791>と、CMやレコードは「懐かしの昭和」でも平成になって株価の低空飛行が続いた銘柄が揃い踏み。業種別騰落率で1位の海運株も2ケタ~300円台の低位株ばかり。年明けから個人投資家が2ケタ銘柄、100円台銘柄を活発にトレードし、それがランキング上位に顔を見せている。低位株を万円単位で高速回転売買する個人投資家と、先物主導で輸出関連や金融、インフラ関連の主力株を億円単位で取引する海外の機関投資家は、今や東京市場を動かす「ツインエンジン」だ。(編集担当:寺尾淳)