東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は、宮城県での地域住民コホート調査参加者のうち、平成25年度に特定健診会場で協力した約7,000人分について分析した。分析から、県内全体で28%の調査参加者に抑うつ症状がみられ、4%でPTSRの疑いがもたれたという。
調査参加者のうち、沿岸部の住民は内陸部の住民と比べて、これらの有病率が高い傾向がみられた。ToMMoでは、特に心理的な指標で問題を抱えた方々に対して、心理士による電話や面談による支援を行っており、支援実施は延べ600人以上にのぼっている。また、既に報告されている震災後急増した心不全による入院の影響から、増加が懸念されていた潜在性心不全(NT-pro BNP高値者)の割合やヘリコバクター・ピロリ菌の感染者の割合に内陸部と沿岸部で差がないことが明らかになった。
まずメンタル面の調査は、調査票によるもので、CES-D(抑うつ傾向)などの国際的な指標を用いた評価を行うとともに、それぞれの方の震災体験や喪失体験についての質問も行っている。結果から、有効な回答を得た7,285人のうち28%の住民で抑うつ傾向(CES-D:16点以上)がみられた。内陸部と比べ沿岸部での有病率が高く、性・年齢を調整したオッズ比(95%信頼区間)は 1.4(1.2-1.6)だった。
同様に抑うつ、不安などを含むこころの健康状態を評価するK6*6が13点以上の者の割合も内陸部と比べ沿岸部でのリスクが高くなった(オッズ比 1.4:95%信頼区間 1.1-1.8)。また今回の調査対象者で、東日本大震災を思い出すことによる苦痛で生活に支障、または影響が出ていると回答した者が4%にのぼり、PTSRにより生活に支障が出ていると感じていることが示されたとしている。PTSR の有病率も沿岸部で 2.4 倍(95%信頼区間 1.6-3.7)と内陸部よりも高くなった。
次に生活習慣及び生理学検査の分析状況では、調査から、以下のことが主に明らかになった。① 被災地で増加の懸念が持たれている心不全の指標については、顕著な増加は観察されなかった。② 調査参加者のうち分析可能な7,462人については、胃がんリスクのある者が40%以上だった。③ 調査参加者のうちデータが完備していた7,451人を分析したところ、慢性腎臓病は約10%が高ステージだった。(編集担当:慶尾六郎)